[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
友人に捧げるpkmnマツイツ。
受け取ってやってくださいなー!
* * * * * * * * * *
「…あのさ」
「ん、何だい?」
「あんまり個人の好みに口出ししたくないけど…それ、砂糖入れすぎじゃない?」
言ってから、マツバの持つマグカップに視線を向ける。
するとマツバの視線も自然と下へ。自分が手に持っている飲み物をまじまじと見つめ、そうかなあ、と言いながら今度はミルクを入れはじめた。
「僕にはこれが普通なんだけど…」
そう言って、スプーンでカフェオレになるであろう飲み物をかき混ぜるマツバ。
勝手なイメージだとは思うけれど、彼はあまり甘いものを好まないのでは、と思っていた。
けれど一緒に住みはじめて分かった事実。
一休みしよう、といって緑茶を煎れる時には和菓子を、コーヒーを入れる時には洋菓子を。
そう、しっかりとお茶請けになるものを用意するのだ、彼は。
しかも、マツバはよく食べる。
美味しい饅頭が手に入ったと言って、休憩中に5個も平らげていたのには驚いた。
そしてコーヒーの場合は今のように砂糖とミルクをたっぷり入れたカフェオレと、甘いクッキーやマフィンなどを用意してくる。(しかも手作り!)
「…前から言おうと思ってはいたけど、見た目に反してるよねその好み」
「そうかな?見た目はどうあれ、美味しいものを食べたり飲んだりしたくなるのは誰だって同じだろう?」
「そうだけど…」
あまりに可愛らしい好みをしているもので、違和感があって仕方ないんだ。
なんて言ったら怒るだろうか。
「何か言いたそうだね」
「べつに。」
視線をそらし、先刻淹れてもらったコーヒーを飲む。
マツバとは正反対に、僕はコーヒーに何もいれない。ブラック派だ。
それが当たり前すぎて、目の前にいる人物との違いに驚いてしまったものだ。
(ああ、いらいらする)
食の好みが違うと、一緒に住むのは難しいという話を聞いたのはつい最近のこと。
うさんくさいテレビ番組で言っていたことだから信じたくはないけれど、どうにも気になってしまう。
だからどうにかして、マツバの好みを変えられないものか、なんて考えてしまったのだ。
「イツキくん?」
「なんでもない」
「そんなに眉間にシワが寄ってるのに?」
「そういう事を言うから…!」
怒鳴りかけてなんとか言葉を飲み込む。
代わりにコーヒーを一気に飲み干し、席を立って部屋に戻ろうと背を向けた が…
「イツキくん」
後ろへと手を引っ張られてバランスを崩す。
よろけたところで後ろからしっかりと受け止められた。相手はマツバしかいない。もちろん、引っ張ったのも彼以外にありえない。
文句を言ってやろうと振り向けば、薄らと笑みを浮かべるマツバがいた。
「…何そのだらしない顔」
「え?うーん、イツキくんが近くにいるから、かな?」
「うざい離れろばか」
「だめだよ。離れたら逃げられちゃうじゃないか」
離れようとしたものの、マツバに捕まった僕は逃げられた試しがない。今回も例に漏れず、だ。
逃げられないなら仕方ない。
仕方ないから逆に抱き着いてやる。
こうするとお互いの顔が見えないから、僕が拗ねている事も分からないだろうと踏んだのだ。
「…珍しい」
「うるさい。黙って抱き着かれてろ」
「はいはい」
顔を見ずとも、マツバが笑っているのが分かる。
長く一緒にいたせいか、雰囲気で分かるようになってしまった。僕も変わったものだ、まったく。
「イツキくん」
「何。ただ名前呼んでみただけ、とかだったら殴るよ」
「ちゃんと意味はあるよ?可愛らしく拗ねてしまった恋人の機嫌を直したいんだから」
「!」
ばれてたのか、と恐る恐る顔を上げれば、綺麗な笑みを浮かべたマツバと目が合う。
目が合った途端、更に笑みが深くなる。
同性ながら、こういった表情を見せるマツバは綺麗だと思う。だってついつい見入ってしまうのだ、僕は。
「どうしたの」
「な、なんでもない」
すべてを見透かしたようなマツバの眼差しから逃げるように視線を逸らした。
けれどそんな僕の心情をあっさり見抜いたであろうマツバは、くすくすと笑い声を漏らす。
ここで文句など言おうものなら、ますます増長させてしまうことは目に見えている。どうせ何を言っても喜ばせてしまうのだ。
だったら何も言わないでおこう。そう決めてから僕は再びマツバに抱きつく事にした。
「イツキくん?」
「だから何でもないってば。静かにしててよ」
「…はいはい」
マツバは楽しそうな声音で返してくる。
それがどうにも悔しいけれど、僕はどうあがいても勝ち目がないのだ。それに、
(偶には…まあ、甘えてやらなくもない、かな)
こうやって、彼の体温を感じるのも嫌いじゃない。
そんな事を考える自分がいる事に驚いてしまったけれど、こんな自分も悪くない。
僕はマツバの胸の中、ひとり笑みを浮かべてそう思ったのだった。
(この後どうするか、なんて考えもしてなかったけれど…それはまた、別の話。)
* * * * *
かさのさんに捧げるマツイツでしたー
二人のイメージ違ってたらごめん。
なんとなく、マツバさんはイツキたんを甘やかしてるイメージ、です…
何を言われようともさらっとかわしてにこにこしてるよ!っていう。