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寂しい、なんてオレの柄じゃねぇんだけど。
昼休み、いつものように屋上で昼飯を食べてる時に、それは思いついた。
運のいい事に屋上にはオレ達以外は誰も居なくて(本田も用事があるとかで居なかったし)つまりは遊戯と二人きり。
こりゃ好都合だ、って事で隣であんぱんを食べている遊戯に話しかけた。
「遊戯、オレさ」
「んー?」
あんぱんに齧りついたせいで普段のような返事じゃなかったが、しっかりとオレの方を見て話を聞こうとしてくれる遊戯。
それが嬉しかったので、気にせず話を続ける事にした。
「オレ、昔はタバコ吸ってたんだけどよ、今はやめたせいか口寂しくてさ」
「うん…?」
相変わらずあんぱんを食べ続ける遊戯は、話の意図が読めないとばかりに首を傾げて曖昧な相槌を打つ。
その姿が可愛くて、口がにやけそうになるのを慌てて抑える。
運のいい事に、食べるのが遅い遊戯はパンに夢中でオレの様子には気付かなかったようだ。
(しっかしよぉ、鈍いよなぁこいつも)
はっきり言わないオレも悪いけど、気付かない遊戯も相当なもんだ。
今の状況を本田が見たら何て言うだろう?『丸くなったもんだ』って笑われるかもしれない。
そう、昔のオレだったらこんなまどろっこしい事なんてしなかった。
自分のしたいようにする。相手の都合なんて考えた事もない。それが昔のオレだった。
けれど、今は違う。
オレは遊戯が好きで、大事にしたい。
友達だと、親友だと言ってくれた、オレを必死で助けてくれた遊戯相手だからそう思う。
…親友相手に恋愛感情を持つ時点でおかしいけれど、本当にそう思う。それなのに、つい。
「やっぱ意味通じねーか」
「え、意味ってなに……っ」
それは一瞬。
パンから口を離した隙を狙って、掠める程度にキスをする。目の端で遊戯の手からパンが落ちるのが見えた。
好きだから大事にしたい、そう思うのは事実だけれど、それと同時に手に入れてしまいたいという衝動に駆られるのも事実だ。
だからつい、行動に移してしまった。触れたのはほんの一瞬だったけれど、何故だか凄く甘かった。これはまるで…
「…あんこ味、だな」
「あっ、当たり前だよ!食べてたんだから!っていうかい、いきなりっ…」
「だから口寂しかったんだって」
笑ってそう言えば、隣の遊戯は真赤な顔で睨みつけてくる。可愛いとしか言い様が無い。ああくそ、もっかいしたい。
けれど睨まれ続けるのも居心地が悪いし(しかももう一回、なんて言ったら殴られそうだし)オレはあっさりと折れる事にした。
「スイマセンしたかっただけです」
「……もう…」
「あれ?怒んねーの?」
真赤な顔のまま、遊戯はフイと顔を背けるだけだった。
てっきり『こんな事するならもうお昼一緒に食べないからね!』とか、『うちの店でカード買うの禁止!』とか、色々な小言を言われるものだと覚悟してたのに拍子抜けだ。
予想外だったので思わずまじまじと見つめていると、ちらりとこちらを見た遊戯と目が合った。
「……そりゃいきなりされるのは嫌だけど!けど、ボクは、」
「うん」
怒られるのも嫌だったので、先を促すように返事を返す。
すると目が合った遊戯が零した言葉は信じられないものだった。
「ボクは…ボクも…し、したかった、し…」
「へ!?」
「な、なんでもないッ!ボク、もっかいあんぱん買ってくる!」
聞き間違いかと思った。いたって健康体なオレの耳が聞き間違えたのかと。
けれどそれは間違いなんかじゃない。そうじゃなきゃ、真赤な顔をした遊戯が勢いよく立ち上がって走り出す訳がない。
遊戯の言葉がぐるぐると頭の中を回り、ぽかんと口を開けて座り込んで走り去る後姿を眺めていたけれど、はたと我に返って慌ててオレも立ち上がる。
「おい、待てよ遊戯!」
その言葉が聞こえているのかいないのか、遊戯の足は止まる事もなかった。
屋上の扉を勢いよく開いて校内へと逃げる遊戯。そんな遊戯を捕まえる為に追いかけるオレ。まるで鬼ごっこだ。
(ぜってー捕まえてやるからな!)
そう大声で言いたいのを必死で抑え、けれどにやける口元を抑える事は出来ないまま、オレは小さな後姿を追いかけた。
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学校でも気にせずいちゃつく城表おいしいですもぐもぐ。
この後捕まっておいしくいただかれるといいんじゃないかな!とか!