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ハロウィンネタのブレクロ話。
ブレイブが押せ押せなブレクロが好きです。

* * * * *

「Trick or treat!お菓子を頂戴するぜー!」

大声をあげ、勢いよく誰かが家に飛び込んできた。
何事かと思ってDホイールの調整を止めて顔を上げれば、そこには見慣れた顔…ブレイブがいた。
「え…お前、何でここに」
「クロウ!丁度良かった、お前に言いに来たんだ」
ブレイブはオレの質問が聞こえなかったかのように言葉を重ね、何故か楽しそうな様子で入り口から飛び降りてきた。
失礼な奴だと思ったが一応客だ、と思い直して軍手を外す。
生憎とオレ以外の住人は出かけているから、自分が対応しなければならないのだ。

「で、何の用事だよ」
「あれ、聞こえなかったか?Trick or treat!って、な?」

相変わらずへらへらと笑ったまま、オレの質問をさらりとかわす。
苛ついても仕方ないのが分かっているので、あーそーかよ、とだけ言ってオレはブレイブに背を向ける。
引き止められるかと思ったが相手は全く気にしていないようで、背後からは動きが感じられない。
部屋の端に避けておいたイスとテーブルを運び、コーヒーを淹れる為に湯を沸かしにキッチンへと足を運んだところで、ふと気付く。

(って、また用意しちまった…)

客が来たからと思わず動いてしまったが、ブレイブがここに来る理由が見当たらないのだ。
WRGPで戦ってからというもの何故かオレは気に入られてしまったようで、ブレイブは特に用事もないくせにここへと足を運んでくる。
その度にオレは客が来たからとコーヒーを淹れてやっている。正直、コーヒー代だって馬鹿にならない(とはいっても金を払うと言われたところで受け取る気もないが)。
何やってんだ、とため息をついたところで湯が沸いた事に気付き、今日も諦めてコーヒーを淹れる。
持っていこうとしたところで視界の端に見慣れないものが写る。
視線を移せば何て事はない、クッキーの山があった。
(そういや昨日、龍亜と龍可と一緒に作ったんだっけか)
理由は忘れたが、どうしても作りたいというので手伝ったんだ。
山盛りになっているクッキーを見ていたら、小腹も空いたことだし少しだけ、と小皿に移す。
トレーにその二つを載せてから表に向かうと、ブレイブは用意したイスに座って大人しく待っていた。
オレが戻ってきたのに気付いて嬉しそうに笑うのは一体どういう事なんだろうか。こいつの考えはまったくもって分からない。

「おかえり」
「どーも。で、用事って何だよ」
「だから、ト…って、うわ、用意してたのか!」

テーブルに置かれたコーヒーとクッキーを見て、ブレイブの目が輝いたような、気がした。
普段はコーヒーしか出していないから珍しかったのかと思ったがそうではないらしい。
オレより年上のくせにまるで子供のように笑顔を見せるのだから、何が起きたのか理解できずにブレイブを見つめる事しかできなかった。

「どっちかっていうと悪戯したかったんだけどなー…って、おい、クロウ?」
「え、あ、何だよ」
「…もしかして、だけどな。今日が何の日か分かってないのか?」
「はあ?」

正直なところ置いてけぼりになっていたオレは、間抜けな声を上げて返答するしかなかった。
それを聞いたブレイブが苦笑するのを見て、しまったと思ってももう遅い。どうせ分からないのだから答えを聞いた方が早い。
眉間に皺が寄るのを直そうと大きく息を吸ってから降参の手を上げれば、相手はクロウらしいぜ、と笑ってからあっさりと答えをくれた。

「ハロウィンだよ、ハロウィン。名前くらい知ってるだろ?」
「!」

その単語を聞いて漸く合点がいった。昨日の龍亜と龍可も、ハロウィンの用意だと言っていたのを思い出したのだ。
二人とも今日を楽しみにしていた様で、お菓子を用意しなければならない理由も楽しそうに話していた。その会話を思い出して口にする。

「…たしか、お菓子を渡さないと悪戯されるんだよな」
「その通り!ま、俺としては『悪戯』しに来たつもりだったんだけどな?」

冗談のつもりなのか、ブレイブは楽しそうに笑ってからクッキーを食べ始める。
いい年した大人が悪戯とは一体どういう事だ。本当に、こいつの考えは分からない。オレは呆れたようにため息をついてから席に着いた。
淹れ立てのコーヒーを飲もうとマグカップを持ったところで、ふと思いついてその疑問をぶつけてしまった。

「悪戯って何だよ、まったく」
「ん?してほしかったのか?」

危うくコーヒーをこぼしそうになり、慌ててテーブルの上に置きなおす。
何を言うかと思えばこれだ。最近のブレイブは、いや最初からブレイブの考えなんてオレには分からない。
分からないが、こちらをからかうのが趣味なのかと思うくらいにおかしな発言をしてくるのだから始末に終えない。
文句を言ってやろうと顔を上げたところで、何時の間にか席を立ったブレイブが目の前に立っている事に気付いた。
気配を感じなかった事に驚き慌てて見上げれば、息がかかるくらいの至近距離にブレイブの顔がある。
こちらを見つめる緑色の瞳がきらきらと輝いていて思わず見惚れたその時、

(え、)

クッキーの甘い香りとともに、何かやわらかいものがオレの唇に触れた、ような気がした。
驚いて後退りすれば、バランスを崩したオレはイスから落ち…そうになったが、ブレイブに腕を掴まれて何とか保つ。

「わ、悪ィ」
「こちらこそ、ってヤツだな」

さっきまでとは違う、人の悪い笑みを浮かべたブレイブに腕を引かれ、起き上がろうとすれば引っ張られた勢いのまま何故かオレはブレイブの腕の中。
何が起きたのか分からぬまま、驚いて再び相手を見上げればそこには相変わらず笑みを浮かべたブレイブがいた

「おいブレイブ、何して」
「何って、悪戯…じゃあないな、本気だし」
「だから、」
「なあクロウ、俺のものになれよ」

言われた意味が分からずに目を瞬かせるオレを見て、ブレイブはまた楽しそうに笑う。
さっき触れたものは何だったのか、その言葉が意味する事は何なのか…オレがすべてを理解しきるまで、大して時間はかからなかった。

(こんなの…悪戯どころじゃねえだろ!)

そう言ってブレイブに怒鳴りつけたのは、また別の話。

* * * * * * * * * 


1日遅くなりましたが
ハロウィンネタのブレクロでした。

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