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思いついたネタを投下しときます
* * * * *
シャワーだけでなく珍しく湯舟に浸かり、心身ともにさっぱりした僕はのんびりとバスルームを出る。
一息つこうとリビングへと向かい、何の気もなしに扉を開けた。
「いいお湯だっ………えっ?」
呑気に独り言を呟こうとした僕の視界に倒れている人物が映り、動きも思考も停止した。
「っ…、ジャック!!」
けれどすぐに我に返る。倒れている人物は僕の大切な人だったのだ。
肩に掛けていたタオルが落ちるのも構わず慌てて駆け寄り呼びかけるものの、彼はぴくりとも反応を示さない。
背筋を寒いものが走り、そんなわけない、と頭を振ってその考えを追い出す。
「ジャッ……あ、れ?」
勇気を振り絞って彼の体に触れると、微かながら動いている。
いや、それどころか…寝息まで聞こえてきた。
よくよく見れば、彼の体には傷ひとつない。つまり…ただ単に疲れて眠っているだけなのだった。
「……もう、ベッドまで運ぶのは誰だと思ってるの…」
人騒がせだ、と文句だって言いたくなる。
けれど彼が無事なことに安心したのも確かで、ため息を吐いて落ち着いてから
苦労しつつもなんとか彼を背負い(アコーディオンの重さで鍛えられた僕は結構力持ちだ。見た目に反しすぎだとジャックがぼやいていたのを思い出した)、寝室へと連れて行った。
寝室には大きなダブルベッドが1つだけ。
ベッドなんて1つでいいといったジャックの要望により、僕たちは一緒のベッドで寝ているのだ。
彼をゆっくりベッドに下ろし、身につけていた物を外して、布団をかける。
ジャックは相変わらず無反応のまま、ぐっすりと眠っている。
寝顔だけ見ていると彼が暗殺者だなんて思えない…いや、思いたくない。
(きっと…仕事、してきたんだよね)
余程疲れているのだろう、規則正しい寝息が聞こえてくる。
普段のジャックだったら誰かが触れただけ…いや、近づいてきただけでも直ぐに反応するのだから。
(出来ることなら止めたいけど、)
こんなに疲れて帰ってきても、僕がどんなに心配しても、彼は止めない。
意思の強い、真っ直ぐな眼差しで見つめられると何も言えなくなってしまう。
だから僕はここで待ち続ける。
彼の帰る場所…僕たちの家で待ち続ける。
ここが彼の居場所だと、そう伝えるために。
(だからせめて、ここではゆっくり休んで)
おやすみなさい、と小さく呟いてから、僕も布団に入り込んだ。
ジャックの隣に丸まって眠る。ここが僕の定位置だ。どこよりも安心する、僕の特等席。
隣で眠るジャックの寝息につられるようにして、僕は意識を手放した。
翌朝、ふと目が覚めた時にはなぜかジャックの腕の中。
(…まただ)
これじゃあ動けないよ、と文句を言うためにも彼を起こそう。
そうして、眠そうなジャックに抱き着いて、くすぐってみるのはどうだろう?
我ながら名案、と思ったところでジャックが動く。どうやら目が覚めたようだ。
「ジャック、おはよう」
「……ああ」
今日もきっと、彼を止めることなんて出来ない。
出来ないけれど、代わりに僕が出来ること。それは彼と一緒にいることだ。
それは僕だけの特権だから、手放す気なんてない。
ジャックの胸に飛び込むと、彼が驚いたようにびくりと反応したのがわかった。
「セシル?」
「なんでもない」
こうやって一緒にいられる時間が何よりも大事だから。
だからどうか、君も僕を離さないで。
そう願って、僕は再び、今度はしっかりと彼に抱き着いたのだった。
* * *
当初の予定ではジャックが弱いとこ見せるはずが・・・、どうしてこうなった。
ジャック→←セシルって感じの片思い同士が好きです。
もちろん両想いも大好きですというかそれが一番です。