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2011年9月の千バトで出したルドガー×不動博士の小ネタです。






* * * * *

それは気まぐれな博士の一言から始まった。
 
「ねえルドガー、僕と手を繋いでみる気はないかい?」
 
研究室へ向かう途中、突然の博士の言葉に思わず足が止まった。
 
 
 
「…はい?」
「あ、ルドガーもそんな表情をするのか。うん、新発見だね」
 
にこにこと笑いながら私を見上げる不動博士。
その姿は成人男性とは思えない程に幼く、可愛らしいものだった。
対する私は博士の発言の意図が分からず、まじまじと相手を見つめる事しか出来なかった。
その様子を見た博士は更にくすりと笑みを零し、左手を差し出してくる。
 
「そういう事だから、はい」
「…」
「どうしたの、ルドガー。君が迷うなんて」
 
らしくないよ?そう言って笑う博士の表情から真意を読み取れずに戸惑ってしまう。
手を繋ぐ。ただそれだけだと言って笑う彼は何を思っているのか。
誰が通りかかるかも分からないというのに(監視カメラにはこの光景もすべて映し出されているだろうに)
全て承知の上で博士は提案したのだろうか。それともただの気まぐれなのだろうか。
どうしたものかと迷っていると、仕方ないな、と小さな呟きが耳に届いた。
 
「ほら、早く」
「博士!?」
 
素早く私の手を取り、博士は何事もなかったかのように歩き出す。
引っ張られる形で後を追って隣を歩けば、博士は満足げにこちらを見上げてきた。
その瞳はきらきらと輝いていて、楽しんでいることが伺える。
(まるで子供のようだ)
彼が天才と言われる不動博士である事など、見知らぬ人間が見たら信じないだろう。
けれどそれでいい。
 
「手を繋ぐというのは何故だか心が落ち着くね。信頼できる相手だからかな」
「…ありがとうございます、博士」
「お礼を言うような事じゃないさ。君はどうだい、ルドガー」
 
そうやって、信頼を寄せてくれるこの人の隣を歩くのは私だけでいい。
(博士を子供だなどと言って笑えない、か)
私は彼に対して子供じみた独占欲を抱いているのだ。尊敬する上司である不動博士その人に。
けれどそんな思いを抱いている事に気付かれないよう、博士に微笑みかける。
 
「私も同じです」
「そう?ならよかった」
 
目を細めて笑う博士がとても綺麗で、鼓動が高鳴る。
繋いだ手からこの想いが伝わってしまったらどうしようか、そんな非科学的な事を考えた。

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