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左右田×日向、毎度のことながらアイランドでのふたり。
* * * * *
日向と両想いになって早数日。最近のオレは調子がいい。
恋人(男だけど)ができたというだけでこんなにもやる気が出るものなのか、と正直驚いた。
世の中のリア充ってヤツが楽しそうにしていたのも頷ける。
「よっしゃ、今日も一日がんばるか!」
声に出してみると尚の事気合が入る。
そうして上機嫌のまま、部屋を出て日向やモノミ達が待つレストランへと向かったオレの機嫌が急降下するのはすぐ後のことだった。
「はァ!?なんで日向と別行動なんだよ!?」
「もー、うるさいなあ。モブはあっち行ってよー」
「オレはモブじゃねー!!」
朝飯を食い、さて採集に行くかと日向に声をかけたところでそれは始まった。
西園寺のヤツが突然日向を誘ってきやがったのだ。
「日向おにぃは私と一緒にネズミー城に行くんだから!アンタは引っ込んでて」
可愛らしい見た目とは裏腹に、西園寺はそう言ってこちらを蔑むような視線を向けてくる。
日向と一緒に行動するのがだるい仕事の中で唯一の楽しみだっていうのに、それをあっさりと奪われたオレは必死に反論の言葉を考えた。けれどすぐには出てこなくて、つい日向に頼ろうとしたのがまずかった。
「日向も何か言ってやれよ!オレと電気屋行くだろ!?」
「うん、そうしたいのは山々なんだけどな…」
「日向おにぃは私を見捨てるの!?ひどいよおおおおお!!!うわああああん!!」
結果、辺りに西園寺の泣き声が大音量で流れ出す羽目になった。途端に、この騒動を眺めていた全員が耳を塞ぐ。
脳に直接響いてくるこの声は凶器だ。頭痛がして反論するのも忘れて耳を塞いだところで、西園寺にしっかり腕を捕まれ逃げ場のない(耳も塞げない)日向が顔をしかめたまま口を開いた。
「わ、わかった、分かったよ!西園寺と一緒に行く!だから泣き止んでくれよ、な?」
「っく…ほんとぉ?」
しょんぼりと肩を落として泣き続ける西園寺に、オレではなく西園寺と行くと告げたのだ。
日向は何度も頷きながら西園寺の頭を撫でる。
「本当だって!」
「やったあ~!!……くすくすっ、そういうワケだからアンタはどっか行ってよねー」
女の涙は武器だと言うが、この時ほどそれを実感したことはない。
日向の返事を聞いた途端に泣き止み、西園寺は勝ち誇った表情でこちらを見てくる。
さっきの声が頭の中で響いたままのオレは何も反論することも出来ず、日向が西園寺に引きずられるようにして出ていくのを見ていることしかできなかったのだ。
「くっそ、西園寺め…」
思い出すだけでムカムカしてくる。
西園寺との戦いに戦わずして負けたオレは、花村、七海という不思議な組み合わせと共に電気屋で採集をしていた。
苛々しているせいか体も熱く、集中できずに大した成果も上げられていないのが現状だ。
それを見た花村が笑いながら話しかけてきた。
「左右田くん、相手が悪かったね。彼女に勝てる人なんて滅多にいないよ?」
慰めにきたのかもしれないが、バカにしてんのかと言いたくなる。
相手が悪かろうがなんだろうが、負けるワケにはいかないっつーのに。
「うっせ!ほっとけ!」
「そんな突然立ち上がったら危ないよー、ま、僕が介抱してあげてもいいけど!」
殴ってやろうかと勢いよく立ち上がったところでぐにゃりと視界が歪む。
あれ、と思う間もなくそのまま地面に倒れ込んだ。
「そっ、左右田くん!?」
「今の音なに?……あ、左右田くん寝てる」
「なっ、なな、七海さん、違うって!倒れてるんだって!」
二人の声が頭に響いてずきずきと痛む。
まったく気付いてなかったなんて間抜けな話だが、倒れたまま起き上がれないくらいにやられているようだ。体が熱いのは苛々しているせいだと思ったのにどうやら違ったらしい。
今日は調子がいい、なんて思ってたのは体温が上がっていかれてたから、かもしれない。
(ちっくしょ、調子最悪じゃねーか)
ぐにゃりと歪んだ視界がどんどん狭まって、突然ぷつりと意識が途切れた。
* * * * *
目覚めてまず見えたのは、見慣れた天井だった。
「……ここ…」
オレのコテージじゃねーか、と独り言を呟く。
すると、がたがたという音とともに、これまた見慣れた顔が目の前にやってきた。
「左右田、大丈夫か!?」
「ひなた…」
そう、日向だ。一番会いたかったヤツが目の前にいて、喜ばないヤツはいない。
なんとか起き上がってはみたものの…頭痛がして思わず顔をしかめる。日向がそれを見逃す筈もなく、心配そうにこちらを見つめていた。
「辛いなら寝てていい、俺はまだここにいるし」
「別に、さっきほどじゃねーし…つーか、お前、西園寺は?採集終わったんか?」
いてくれるという発言に礼を言えばいいものの、照れくさいのでそれも出来ずに別の話題を降ってしまう。
恋人になったとはいえ、甘い雰囲気など今まで経験していないオレはどうにもうまくやれない。
しかしそんな情けないオレにがっかりすることなく、日向は普通に答えてくれるのだ。
「途中で抜け出してきた」
「はァ!?」
変なところで真面目な日向がフケてきたというのでつい大きな声を出してしまい、再び頭が痛む。
何をやってんだと自分でも呆れたところで、日向はくすりと笑った。
「っていっても、モノミ公認だし…まあ、後で居残り…かもな」
「なんだよ、許可までもらったのかよ…。ちゃっかりしてんなァ」
真相がわかると単純なもので、オレもつられて笑う。
それを見てほっとした様子の日向は、そういえば、と話を続けた。
「左右田、腹減ってないか?昼も食べてないだろ」
「そういやァ…減ったかもしんねー」
倒れてから何時間経ったのか分からないが、窓の外を見る限り日が傾いてきているのが見てとれた。
オレの返事に、日向はじゃあこれ、とテーブルに置いてあった皿を持ってきた。皿の上には、昔よく見たお馴染みの切り方をされたリンゴがのっている。
何も言わずにそれをじっと見つめていると、日向は所在なさげにそわそわとしていた。
「な…、なんだよ、何か言ってくれよ」
「このうさぎ…オメーがやったんか?」
「…そうだけど」
「まじかよ、オフクロみてー」
素直に思ったことを言えば、微妙な顔をされた。
けれどたしかに、オレも言われたらそんな顔をしそうだなと思い直す。
可愛らしく並べられたリンゴのうさぎをひとつ手に取って口に入れれば、程よい甘酸っぱさが口に広がる。
「形はともかく、美味いだろ」
「おう。さんきゅ、日向」
「どういたしまして」
日向は安心したように目を細め、全部食べていいぞと微笑んだ。
(くそ、可愛い)
飲み込んだところで、どうせなら恋人らしいことをひとつくらいはしたいという気持ちが沸き上がってきた。
こういう時にやることといったらひとつしかない。
男なら一度は夢見る、あれだ。あーんってやつ。正式名称なんて知ったこっちゃないが、とにかくあれだ。
言ってやる、と思ったら緊張してきて、ごくりと喉を鳴らして唾を飲み込み……
「なあ日向、オレ、」
『おにぃーーーー!!!はやくぅ!!モブ菌がうつっちゃうよお!』
「……」
「…はは、西園寺は元気だな」
「元気とかいうレベルじゃねーだろ…」
その緊張は、あっさりと解かれてしまったわけだが。
またさても西園寺に邪魔をされ、大きな溜め息を吐く。日向も苦笑いを浮かべ、それでもやはり西園寺のところへ行くらしい。椅子から立ち上がり、申し訳なさそうに頭を掻いた。
「また後で、夕飯の時に来るよ」
「へーへー。じゃあそれまで寝てるわ」
「……左右田、あのさ」
「んぁ?」
寝ようと布団を被った所で声をかけられ、顔だけ出して日向を見上げた。
そこにはどこか落ち着かない日向の姿があって、どうしたのかと首を傾げる。
どーしたんだよ、と声をかけようとしたところで日向の顔が降りてきて、額に柔らかいものが触れた。
「!?」
「は、早く治せよ!俺も左右田と一緒に居たいんだからさ!」
言うだけ言って、日向はばたばたと慌てた様子でコテージを出ていった。
残されたオレはといえば、ぽかんとしたまま天井を見上げたまま。
さっきの感触を思い出すと頭がぐらぐらして、熱が更に上がったような気がした。
(くっそ、治る気しねー…けど、早く治さなきゃ、)
日向を西園寺に取られてしまう。
いや別に、オレと日向は付き合っているんだから取られる心配はないと思いたい。思いたいが、相手はあの西園寺だ。何をしてくるか分かったもんじゃない。
今回だって泣き落としで日向を困らせていたんだから、本気を出したら何をしてくることやら、だ。
(あー、頭痛ぇ)
西園寺対策も考えなきゃいけないし…、何より、また数時間後に会う日向にどんな顔して会えばいいのか、それをまず最初に考える必要がある。
(…でも、こーゆーことがあるなら、倒れるのも悪くねーよな)
そう思い直し、布団を被りなおして一人で幸せに浸る。
こんな顔見られたらまた呆れられるかもな、と呑気なことを考えながら、オレは眠りについたのだった。
* * *
左右田くんとひよこちゃんで日向くんを取り合いしてたら
可愛いなーと思うんですがどうでしょう…どうでしょう…!?
左右日というだけでマイナーなのに、これまた自給自足な方面へ走ってます。
アイランドのひよこちゃんかわいい。
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