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ついったでリクしてくださった乙夜さんに捧げる十表小ネタ。
どうぞ受け取ってやってくださいー!









* * * * *


「十代くん?」
「……」

名前を呼ぶと、不機嫌そうにこちらを見つめる十代くんと目が合う。
何故かは分からないが彼の機嫌が悪い。
何かあったかなあ、と思っても、今日は彼と二人で買い物に行ったくらいだ。
理由も分からないままでは埒があかないので、ボクは思い切って話しかける事にした。

「ねえ、十代くんってば」
「…なんですか」
「何怒ってるの。言ってくれなきゃ分からないよ」

正直にそう言うと、十代くんは怒っているような落ち込んでいるような、複雑な表情を浮かべた。
喋ってくれる事を期待して待ってみても、彼は何も話してくれない。
普段なら十代くんから話しかけてくれるのを待つボクだけど、だからこそ余計にこの沈黙が辛い。
耐えられなくなって、一人で今日の出来事を思い出そうとしてみる。

「ええと、朝はボクが朝食を作って、お昼前に二人で買い物に行って…あ、城之内くんに会ったよね」
「!」
「久しぶりに会ったから嬉しかったな。十代くんも会ってみたいって言ってたもんね」
「…別に、俺は会いたくなかったです」

不機嫌そうな声が聞こえて顔を上げれば、目の前には眉間に皺を寄せた十代くんがいた。
そこで漸く気付く。
(もしかしてこれって、)

「…やきもち?」
「っ、そうです!ようやく気付くとか遅すぎますよ遊戯さん!!」

聞いてみると、思いっきり不機嫌です、と言いたげに睨まれてしまった。
けれど不機嫌な十代くんとは逆に答えが分かってすっきりしたボクは思わず笑ってしまったものだから、余計に彼の機嫌を損ねる結果となってしまった。
視線を逸らしてボクに背を向ける彼は子供のようで、嫉妬してくれたということも相まって、そんな彼を愛おしく思えるのだから不思議なものだ。

「気付くのが遅くてごめんね」
「…謝っても遅いです」
「そう言われても…あ、でもね、嬉しかったよ」
「?」

嬉しいという単語が出てきた事に驚いたのか、背を向けていた十代くんが振り返る。
未だに不機嫌な表情のままだったけれど、ボクは笑顔を浮かべて言葉を続けた。

「嫉妬してくれるくらい好きだって事でしょ。だから嬉しいなって」
「っ、当たり前じゃないですか!!俺は遊戯さんが好きです、城之内さんより…いや、誰より絶対!」

怒っていた筈の十代くんに突然告白されて、今度はボクが驚く番。
ぽかんと口を開けて見上げていると、十代くんが勢いよく抱きついてきた。
突然だったので受け止める事も出来ず倒れてしまい、十代くんに押し倒されるかたちになってしまう。

「じゅうだいくん、あの、」
「俺は遊戯さんが好きです。遊戯さんは?」
「ボクは、」

十代くんの顔が近い。真剣な眼差しで見つめられて息が出来なくなりそうだ。
さっきまで怒っていた彼は一体何処へ行ったのだろう。
真っ直ぐな瞳に見つめられ、顔が熱くなっていくのが分かった。

「ゆうぎさん、」
「ボクも、好きだよ」
「ほんとですか」
「ほんとにほんと。ボクが好きなのは十代くんだけ、だからその、ええと、」

ちょっと近すぎるし恥ずかしいから離れようよ、と言う前に口を塞がれた。
驚いたけれど嫌ではなかったし、十代くんが何度も何度も求めてくれるのがどうしようもなく嬉しくて。
だからボクも彼に抱きついた。身体があついと感じるのは自分なのか彼なのか。どちらなのかは分からない。
けれど、

(もう少しだけ、このままで)

彼の背中に回した腕に少しだけ力を込めたら、十代くんが笑った、気がした。



* * *

喧嘩ネタ十表、ということだったんですが
・・・喧嘩かこれ?
という話になりましたすみません…
 

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