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幻水5・シグレ主 2話目。
* * * * *
最近、視線を感じる。
それは知り慣れた人物…と、いうか、これはうちの先生のものだ、という確信がある。
何故なら、それは。
「…やっぱアンタかよ」
「あれっ、見つかってしまいましたか」
悪びれた様子もなく、にこにこと笑いながら木の影から現れた、張本人に問い正したから、だ。
「…で、つまり?」
「おや、シグレ君。判断力が鈍ってしまいましたか?」
「違うってぇの…」
「はいはい、分かってますよ。つまりは、王子殿下に頼まれたんです、これが」
相変わらず、全く先が読めない人だ。
事務所へと場所を移した後、オレの質問に笑顔で答えながらフヨウが淹れた茶をすすっている姿を見て、心底そう思った。
それに加えて…あいつからの調査依頼?
全くもって意味が分からん。
そんなオレの考えを読んだのか(こっちとしては実際どうなのか全く分からないのが癪だが)、先生は楽しそうにオレを眺めている。
「いやぁ、青春ですね」
「は?」
何が青春、だ。男が男の事を調べてたって、何も楽しい事なんかはないだろうに…依頼人があの王子だという点は引っ掛かったが、今はオレの心情なんかを気にしている場合ではない。
オレは眉根を寄せ(とは言っても相手には見えないだろうとは思う)、はっきりと先生に言ってやる事にした。
「迷惑なんで、やめてもらえますかね」
「おやおや、そんなに怒りのオーラを出さなくても」
相変わらず湯気を立てている茶をすすり、先生は慌てる様子もない。オレは更に苛立ちを込めて言い放つ。
「……やめてもらえますか」
「…何を言っても無駄のようですね。仕方ありません」
「じゃあ」
簡単に諦めてくれた先生の言葉に、オレは安心して肩の力を抜いた。が。
「シグレ君、キミが殿下に直接言ってきてもらえますか?」
「…はァ?」
先生の言葉に、今度は呆れる番だった。オレは意味が分からず唖然としたまま口を開ける。しかし先生はそんなオレを気にもせず、相変わらず表情の読めない笑顔で告げたのだ。
「いえね、私としては殿下からの調査依頼を断るのは忍びない訳ですよ。ですから、標的となっているキミから直接断っていただきたいんです。分かります?」
「…………」
そう言った先生から、無言の圧力がオレの体にのしかかる。
こうなったら何を言っても無駄だ。ここで暮らすようになってからというもの、先生に言い勝てた試しがないのだから。
「……分かりましたよ」
あっさりと諦めたオレは溜め息と共に立ち上がる。するとガタン、と古びたソファが傾いた。
それを直す気力も、振り返る気も起きなかったオレはそのまま事務所を飛び出した。
オレにしては珍しく走り出して…馬鹿な依頼人のもとへ向かったのだった。
* * * * * * * * * *
続いてしまったシグレ×王子。
しかも、×というか、シグレ→←王子…?片思い同士という事で。
+ おまけ +
「あら、シグレちゃんは?お茶淹れたんですけど」
「青春の日々を取り戻しに行きましたよ。あ、お茶が勿体ないですし、私がいただきます」
「はぁ…まぁ、それはいいんですけどもね。青春って…?」
「いやぁ、お茶が美味しいですねー」
「……」
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