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幻水5、シグレ主 5話目。
前髪が気になる王子様。
前髪が気になる王子様。
* * * * *
それはいつもの帰り道。面倒な迷宮からようやく抜け出し、欠伸をしていたオレに投げ掛けられた、今更な質問が始まりだった。
「シグレさん、前髪切らないんですか?」
「…めんどくせぇ」
深く考えもせず、適当な答えで乗り切ろうとすると、王子は不満げにオレを見上げてきた。
「切った方が良いですよ、絶対」
「何でだよ」
「あー、えっと。僕が見たいってだけですけど」
そう言って、王子は肩を竦めて苦笑する。オレはいつもの通り、呆れるしかなかった。
「…阿呆らし」
「っ、アホじゃなくて好奇心です!それに…」
「あ?」
顔を俯かせて言い淀む姿を見て、何事かと王子を見つめる。
すると突然、何かを決心したらしい王子は勢いよく顔を上げ、再びオレを見上げてきた。
こいつだって疲れているはずなのに、瞳だけはきらきらと輝いている。
真っ直ぐに、オレを見つめる瞳。はっきり言って心臓に悪い。
オレがその瞳に弱いのを知っているのではないかと錯覚してしまう。
なんとも居心地が悪くなり、目を逸らす。しかし王子はオレの様子など気にもせず。
「シグレさんの事が知りたいんです!だから、素顔も見たいな、って思って…」
そんな、更に心臓に悪い発言をしてきたのだった。
「な…阿呆か、お前は!」
「だから阿呆じゃないですよ!以前にも言ったじゃないですか、仲間の事を知りたいんだ、って」
「………知るか」
懸命に訴える王子を前に、オレはうんざりと頭を抱えるしかなかった。
王子に悪気はなく、本当にそう思っているのは分かる。分かってはいる、が…
(…クソ、人の気も知らねーで)
何も知らない、分かっていない王子と
何も言わない、言えない自分に嫌気が差す。
それでも何とか怒鳴りたくなるのを堪え、オレは王子を置いて歩き出した。
「あ、し、シグレさん!?」
「先帰るぞ」
「ちょっ、待って下さい!僕も帰ります!」
慌てて駆けてくる足音に安心しながらも、今後の事を考えて、オレは深い溜め息をついた。
(いつか…言うしかねーよなァ…)
本当に、いつになるかは分からないが…いつの日か、後ろをついてくるあいつに言うべき時が来るんだろう。
面倒な事が嫌いだったはずなのに、気付けば自分から首を突っ込んでいたのだ。
自らの手で終わらせるしか方法がない…そう、分かってはいる。
けれど。
いつか…あの言葉を告げるまで。それまではどうかこのままで、と願ってしまう。
いつもと変わらない日々のまま、そう願ってしまうのだ。
面倒だから変わらない日々のまま、ではなく…共にいたいから、このままで。
(人間、変わるもんだな)
そんな自分の考えに笑いそうになり、ふと空を見上げると、あいつの瞳のようにきらきらと輝く太陽が見えた。
* * * * * * * * * *
シグレ、決意をするの巻。
でも多分、シグレが言うのはかなり遅いんじゃあないかと…。
それはいつもの帰り道。面倒な迷宮からようやく抜け出し、欠伸をしていたオレに投げ掛けられた、今更な質問が始まりだった。
「シグレさん、前髪切らないんですか?」
「…めんどくせぇ」
深く考えもせず、適当な答えで乗り切ろうとすると、王子は不満げにオレを見上げてきた。
「切った方が良いですよ、絶対」
「何でだよ」
「あー、えっと。僕が見たいってだけですけど」
そう言って、王子は肩を竦めて苦笑する。オレはいつもの通り、呆れるしかなかった。
「…阿呆らし」
「っ、アホじゃなくて好奇心です!それに…」
「あ?」
顔を俯かせて言い淀む姿を見て、何事かと王子を見つめる。
すると突然、何かを決心したらしい王子は勢いよく顔を上げ、再びオレを見上げてきた。
こいつだって疲れているはずなのに、瞳だけはきらきらと輝いている。
真っ直ぐに、オレを見つめる瞳。はっきり言って心臓に悪い。
オレがその瞳に弱いのを知っているのではないかと錯覚してしまう。
なんとも居心地が悪くなり、目を逸らす。しかし王子はオレの様子など気にもせず。
「シグレさんの事が知りたいんです!だから、素顔も見たいな、って思って…」
そんな、更に心臓に悪い発言をしてきたのだった。
「な…阿呆か、お前は!」
「だから阿呆じゃないですよ!以前にも言ったじゃないですか、仲間の事を知りたいんだ、って」
「………知るか」
懸命に訴える王子を前に、オレはうんざりと頭を抱えるしかなかった。
王子に悪気はなく、本当にそう思っているのは分かる。分かってはいる、が…
(…クソ、人の気も知らねーで)
何も知らない、分かっていない王子と
何も言わない、言えない自分に嫌気が差す。
それでも何とか怒鳴りたくなるのを堪え、オレは王子を置いて歩き出した。
「あ、し、シグレさん!?」
「先帰るぞ」
「ちょっ、待って下さい!僕も帰ります!」
慌てて駆けてくる足音に安心しながらも、今後の事を考えて、オレは深い溜め息をついた。
(いつか…言うしかねーよなァ…)
本当に、いつになるかは分からないが…いつの日か、後ろをついてくるあいつに言うべき時が来るんだろう。
面倒な事が嫌いだったはずなのに、気付けば自分から首を突っ込んでいたのだ。
自らの手で終わらせるしか方法がない…そう、分かってはいる。
けれど。
いつか…あの言葉を告げるまで。それまではどうかこのままで、と願ってしまう。
いつもと変わらない日々のまま、そう願ってしまうのだ。
面倒だから変わらない日々のまま、ではなく…共にいたいから、このままで。
(人間、変わるもんだな)
そんな自分の考えに笑いそうになり、ふと空を見上げると、あいつの瞳のようにきらきらと輝く太陽が見えた。
* * * * * * * * * *
シグレ、決意をするの巻。
でも多分、シグレが言うのはかなり遅いんじゃあないかと…。
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