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幻水5、シグレ主 3話目。
カイル出現のまき。


* * * * *

「おーうーじーー!!」
「ぅわっ!?」

背後から突然抱きつかれ、何事かと抱きついてきた人物を見上げる。
目の前には綺麗な金髪を額に張り付かせ、息をきらせながらも僕を離そうとしないカイルと目が合った。
どうやら全速力で走ってきたようだ。額に汗が浮かんでいる。しかも、何故だか瞳にはいっぱいの涙を溜めていて。
どうしたの、と聞く前に、カイルは再び僕を抱き締めてきた。それと同時に耳元で聞こえる泣きそうな声。

「うぅ、どういう事ですかー王子ー」
「え、な、何が?」

カイルの言わんとする言葉が掴めなくて、僕は後ろから抱き締められるがまま。どうでも良いけれど、こんな所で抱きつくのはどうかと思った。
(何故って、僕は一応この城のリーダーだし、カイルは僕を守る、と言って聞かない女王騎士だからだ。はっきり言って、これは相当情けない姿だと思う)

どうにかしてこの体制から逃れようと動いても、カイルはぎゅっと抱きついたまま。カイルの腕力に勝てた試しはないから、逃げるのは無理だと諦める。どうしたものか、と僕はため息をついた。

「どうしたのさ、カイル」

カイルを見上げ、返答を待つ。するとあっさりとカイルの手が離れ、僕はカイルの正面に向き直ることができた。目の前にいるのは、声と同様、泣きそうな顔をしたカイルの姿があった。

「…王子、この際はっきり聞きますが」
「うん、何?」

泣きそうな顔をしていたとは言っても、さすがは女王騎士。すぐに真剣な表情へと変わり、僕の両肩をがっしりと掴み、カイルは真っ直ぐに僕を見つめる。
僕も正面から見つめ返し、カイルの言葉をじっと待つ。少しずつ、緊張してくるのが分かる。
カイルの…、いや、騎士のまっすぐな瞳というのは、どうしても緊張する。彼らがこんな表情をする時は、決まって僕や両親、リムを護ろうとする時だったからだ。
何とか緊張を和らげよう、と僕が思い切って話しかけようとした、その時。

「前髪長すぎて表情見えなくてしかも極度の面倒くさがりで仕事も進んでやろうともしないあんな最っっ悪な奴と付き合ってるというのは本当なんですか王子!!」
「…な、何だって?」

開いた口が塞がらない、とはこの事か。
緊張していたのが馬鹿みたいに、先刻までの雰囲気ががらりと変わった。カイルは再び泣きそうな表情で僕を見ていて、僕はカイルの質問の意味がすぐには理解できなかった。

「どうなんですか王子!嘘ですよね?嘘だって言って下さい!あんな、あんなのと、だなんて…!これはあれですよ、オレが護ってきたのが全て水の泡になっちゃうわけですよ!?ね、王子、嘘ですよね!?」
「え、いや、だからね」
「嘘だって言ってくださいー!」

混乱する僕に、カイルは容赦なく質問をぶつけてくる。がくがくと肩を揺さぶられ、ちゃんと考える事もままならない。どうしたら良いのか分からなくて、質問の意味も分からなくて、頭が痛くなる。

「そこらへんにしとけ」
「…っ!」

びくり、とカイルの体が震える。それと同時にようやく僕は解放された。
僕の肩から手を離したカイルは、先刻までの僕を見る目とは全く違った鋭い瞳で、僕たちの前にやってきた人物を睨みつける。
そして、僕はそこでようやく誰がやってきたのかを知った。

「あ…シグレさん」
「邪魔だ、おまえら」

どうも、と会釈をする僕とは正反対に、追い払うように手を振るシグレさん。
カイルが凄い勢いで睨むから誰かと思ったら…と、カイルに目を向けると、まだシグレさんを睨みつけていた。まるで番犬のよう…なんて、言ったら怒るだろうな、なんてふと思った。

「何でお前がいるんだ」

普通の人が見たら、どう見てもカイルが喧嘩を吹っ掛けているようにしか見えないだろう。それくらい、カイルの様子が刺々しくて、僕はどうしたものかとシグレさんを見る。
するとシグレさんと目が合った…ような気がした。(目が見えないから、実際どうなのかは分からない。けれど、そんな気がした)

「どこにいようとオレの勝手だろ」

シグレさんはカイルの視線を気にする様子もなく、淡々と答える。
それがますますカイルを怒らせる原因になるんじゃないか。そう思った僕は慌ててカイルに目を向ける。すると今度はカイルと目が合った。カイルは真っ直ぐに僕を見つめ、そして僕の腕を掴んで歩き出す。

「…王子、行きましょう」
「え、ちょっと」

強く引っ張られ、話の途中だよ、なんて言える雰囲気でもなく、僕はされるがままにカイルの後を歩き出す。
後ろにいるはずのシグレさんは引き止める様子もなく、無言のまま。ちらりと後ろを振り返ると、シグレさんは微動だにせず、じっと僕たちを見つめていた。

「そ、それじゃあ、また」

気まずいままなのも嫌だったので、苦笑まじりにそう告げる。
するとシグレさんは気まぐれなのか何なのか、軽く手を振ってくれた。

「……あぁ、またな」

そう言って。
口の端が上がったのを見て、シグレさんが笑ったというのが分かった。
カイルには悪いと思ったけれど…何だか嬉しくなって、僕は笑顔で手を振り返した。


結局、どうしてカイルが怒っていたのか、あの質問はどういう意味だったのか…分からないままだったけれど。
シグレさんも怒っていないみたいだし、いいか。そう、前向きに考える事にして、僕は前を向いて歩き出した。


* * * * * * * * * *

前半ギャグ、後半カイルvsシグレ、という事で。
上手くまとまらなかった感が…。難しい。
あ、あとうちの王子は前向きです。
(そうじゃなきゃ戦ってられないんじゃないかと思ったもので)
そして王子は鈍いので、シグレを好きという事に気付いてない事希望。
逆にシグレは意識してると良いな…!
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