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幻水5、シグレ主 4話目。
昼寝するふたり。

* * * * *

春の日差しが暖かくなってきた、今日この頃。
オレは調査をサボって昼寝をしようと思い立ち、絶好の場所へとやってきた。
寝転がって瞼を閉じかけた時、不意に光が遮られた。何事かと思い、ゆっくりと瞼を開けると真上には見覚えのある人物がいた。

「隣、いいですか?」
「…おぅ」

太陽の光を浴び、きらきらと輝く銀髪。
オレの了承を得ると柔らかい笑みを浮かべ、ゆっくりとオレの隣へ座る…見慣れた、人物。

「…王子様がこんなとこにいていいのかよ」
「あー、えっと。たまにはサボっても良いかなぁ、なんて思ったんですけど…駄目でした?」

口をついて出てくるのは歓迎の言葉なんかじゃあなく。ただ、嫌味のような言葉しか出てこない。
そうして、言った後に『なんて天邪鬼なんだろう』と自分に呆れ返る。
けれど言われた相手はオレの言葉を気にする様子もなく、微笑みを浮かべたまま。
ずっと見ているのも居心地が悪くなり、オレは視線を逸らした。

「別にお前が良いならいいけどな…」
「なら良かった。…あのっ、ありがとうございます」
「礼を言う事じゃねーだろ」
「そうですか?でも、シグレさんが認めてくれた気がして、嬉しくて」
「…あ、そ」
「はい」

今度は王子の言葉に呆れ返り、オレは溜息と共に芝生に寝転がる。
眩しさに目を細めてから空を見上げると、燦々と降り注ぐ、太陽の光。
視線の隅に入った王子の姿は、相変わらず輝いているように見えた。寝転がる事もなく、ただ木に寄りかかり、ぼんやりと空を見上げている。
瞳を閉じて眠ろうとしても、焼きついたように王子の姿が頭から離れない。
あぁ、気になって眠れもしない。…言い訳じみているが、緊張して眠れないのだ。

(いつからオレはこうなっちまったんだ?)

考えてみても、原因ははっきりしなかった。
しかし…隣にこいつがいて、安心するのも事実。
先程の原因とは違って、安心する理由は分かりきっていて…今までにも、何度も何度も考え直した。
相手は男、しかも一国の王子だ。諦めろ。いい加減馬鹿な事を考えるのは止めろ、と。

そう何度も思い直したというのに、結局は諦めきれない自分がいた。

(馬鹿じゃねーのか、オレは)

自分に悪態をつきながらオレは眠りに就こうと努力した。
緊張しているのは事実だが、理由を認めてしまえばなんて事はない。そうだ、寝てしまえ。寝て、全てを忘れてしまえ。
ぎゅっと目を瞑り、何とか頭の中に浮かび上がる王子の姿をかき消した。


「おやすみなさい、シグレさん」
「…っ、オヤスミ」


そんなオレの必死の努力も、王子の言葉で全て無駄になり。
……結局、寝ることが出来なかったなんて馬鹿馬鹿しすぎて、絶対に知られたくない。


* * * * * * * * * *


『シグレ、恋を自覚する』の巻。
ようやく観念して、王子が好きだと認めるシグレ。
王子はそんなシグレの思いも知らず会いに来る…ってのがおいしいかな、と!

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