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幻水5、シグレ主 10話目。
ミニゲームネタのつづき。


* * * * *


今日は運が悪い。
別に誰かに占ってもらった訳でも、そういうモノを信じる性質(タチ)でもないが…今日は、運が悪い。
先刻から事務所に居座っているリンファに捕まった時から、そうじゃないかと思ったのだ。

「何でオレが…」
「ぶつくさ言わないの。せっかくアタシが相手してやってるんだから!」

楽しそうに鼻歌なんぞを歌いながら、リンファはカードゲームに夢中になっている。
この勝負が終わったらもうこいつに付き合うのはやめよう、そう思ってカードを手に取った時だった。

「あ!カモ…じゃなかった、丁度良いところに~!」

リンファが驚いたように声を上げるものだから、誰の事かと振り向くと、そこには王子がいた。
普段なら笑顔で部屋にやってくるはずなのに今日に限っては中に入ろうともせず、そこから微動だにしない。
どうしたのか不安になり、オレは思わず声をかけていた。

「おい、王―――」

しかし、その言葉は最後まで言う事なく途切れてしまった。何故って…王子が逃げ出したから、だ。
扉を開けっ放しにしたまま、王子は何も言わずに走り去ってしまった。

「ありゃ~、良いカモが来たと思ったのにぃ」
「・・・」

オレが呆然としている中、リンファは呑気に笑っている。
王子に何があったのかは知らないが(大体、ここに来たはずなのに逃げるとはどういう了見だ)、逃げられたままでは後味が悪い。
それに何より…

「ってちょっと、追いかけないで良いの?」
「…う、五月蝿ぇ!!言われなくとも…」

思わずかっとなり、オレはリンファに怒鳴りつける。そしてそこではたと気付いた。
リンファは人の顔を見ながらにやにやと笑っているし、すっかり忘れていたが事務所の面々までもがこちらを見ているのだ。

「言われなくとも、何ですか?」
「そうよシグレちゃん、お話の続きはなぁに?」
「…予想は、つくけど」
「そうよね~。シグレって分かりやすいし」
「だから、五月蝿ぇっつってるだろうが!オレはもう行くからな!」

そう、部屋に居る奴ら全員から遠慮の無い視線が突き刺さり、居心地の悪くなったオレは怒鳴りながら部屋を飛び出した。

(言われなくても、気になるから追いかけるっての…!)

オレの考えをお見通しだと言わんばかりの奴らに苛々しながら、オレは廊下を走り始めた。

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