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幻水5、シグレ主 番外編。
恋人設定のふたり。


* * * * *

言われてみたい言葉がある。言いたい言葉がある。
それを僕は、自然と口にしていた。


「シグレさん」
「あ?」
「好きです」

僕の言葉に、シグレさんは固まった。
けれど直ぐに我に返ったのか、煙草を吹かしながら訝しげに聞き返された。

「…っ、な、何だ突然」
「えぇと。大した理由じゃないんですけど…シグレさんはあんまり言ってくれないから。だから僕から言う事にしようかなって」

シグレさんの様子が何だかおかしくて、僕は微笑んでからそう答えた。
するとシグレさんは不満げに顔を背け、フゥ、と煙草の煙を吐く。

「…悪かったな、口下手で」
「あっ、いえ!それが嫌って訳じゃないんです!言われなくたって、僕はシグレさんが好きですから」

不機嫌そうなシグレさんを前に、僕は慌てて弁解する。

(…そう、不満って訳じゃあないんだ。)
(ただ、聞きたいなって、思ったりはするけれど。)

こんな、子供みたいな事は言えなかった。
呆れられるのが嫌だから、そして何より嫌われたくないから。

僕の弁解を黙って聞いていたシグレさんは、困ったように頭を掻いて。。
そうして、煙草を吸って、長い長い溜息を吐いてから、僕の肩に手を置いた。

「………あのな」
「?シグレさん?」
「耳貸せ」

言ってからゆっくりと近付いてくる、シグレさん。
僕は座ったまま(というよりは固まったまま)、一体どうしたのかとシグレさんの言葉を待った。

そうして…耳元で囁かれた言葉、それは…まぎれもなく。

( 愛してる )

「…っ!!」

聞いた途端、僕は耳を押さえてシグレさんから勢いよく離れた。
囁かれた言葉はまだ耳に残っていて、心臓は五月蝿いくらいに騒いでいる。

「満足していただけましたか?王子殿下」

段々と、顔が熱を帯びてゆくのが分かる。
それを楽しそうに眺め、にやりと人の悪い笑みを浮かべるシグレさん。
僕は真っ赤になりながら、そして耳をを押さえたまま、

「ま…満足じゃ、ないです」
「あぁ?」
「本当は…たくさん、聞きたいです…」

子供のような、恥ずかしいばかりの本音を呟くと…シグレさんはくつり、と喉を鳴らして。

「お望みのままに?」

そう言って、楽しそうに笑ってくれた。


* * * * * * * * * *

誰これ…!(笑)
シグレ主をたまにはラブラブにしよう、
と思って書いてみたらこんな事に…!
初めてヘタレじゃないシグレが書けました。

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