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幻水5、シグレ主 10話目後半。
逃げる王子、追いかけるシグレ。

* * * * *

王子の居場所は、案外簡単に見付かった。
見覚えのある木陰に座り込んでいる王子の姿を見て、オレは少し安心してしまった。


(心配させやがって…)

そうは思っても、ひねくれた性格のオレが言えるはずもなく。
どすん、と王子の隣に座り込み、オレはキセルを取り出して煙草を吸い始める。
突然の来訪者に驚いた様子の王子も、オレだと気付いて安心したような溜息をついた。

「シグレさん」
「…お前な、」

フゥ、と煙草の煙を吐き出しながら、オレは王子を睨みつける。心配させたんだ、これくらいならいいだろう。
王子はオレの視線にびくりと肩を震わせたが、すぐにこちらを真っ直ぐに見つめ返す。

(…いつもと変わりない、けどなァ)

王子の様子に心の中で首を傾げながらも、オレは逃げた理由を問いただす事にした。

「何で逃げた」
「す、すみません。邪魔かと思って…」
「はァ?邪魔?」

言いながら、王子の視線が逸らされる。そして何故か、頬が薄らと、ではあるが赤く染まり始めた。
王子の様子に驚きつつも、オレは次の質問を口に出す。すると王子はこくり、と頷いてから

「だ、だから。シグレさんとリンファさんの邪魔しちゃ悪いかな、と思ったので…」

余りにも馬鹿馬鹿しい、ありえない事を言ってきたのだ。
オレは驚きの余り力が抜け、やはりというか、キセルを落とした。
(今までにも何回も落としかけたが、今回の動揺はそれ以上だったらしい)
しかし、驚愕したのはその一瞬だけで、オレはすぐに体裁を保とうと何とか声を出す。

「邪魔なんて、一回も言った事ねーだろ」

もしかしたら声が上擦っていたかもしれない。
それだけ、オレは動揺していたのだ。王子の言葉の意味―――それはまさか…

「本当、ですか?」
「…嘘吐いてどうする」
「そっ、そうですよね!よ、良かったぁ…」

それはまさか、嫉妬なのではないか?…という答えが浮かび上がったからだ。

オレがそんな事を考えているとも知らない王子は、安心したように微笑んで、すみません、と呟いた。
王子の様子を見ているだけでは、その真相は定かではない。

(…つーか、んな事聞けねーし・・・)

考えていても埒があかない事ではあるが、だからといって聞けるような素直な人間じゃあない。
仕方ない、と頭を掻いてから、オレは話を逸らす事にした。

「…にしても」
「はい?」

どうやら安心しきったのか、王子は微笑んだままオレの言葉を待っている。
その様子が、オレを動揺させる原因だとも知らずに。

(こうなったら、ヤケだ)

そう思った自分の考えも相当馬鹿だと思いながら、オレは先刻までのお返しとばかりに文句を言ってやる。

「お前、ほんっとガキだな」
「う。…仰る通りです・・・」

ただその一言だけで、王子は落ち込んだように肩を落とす。
それだけでオレも動揺するんだから、馬鹿馬鹿しいったらない。

「…だから放っておけねーんだよ、馬鹿野郎」
「えっ?」

文句というよりただの独り言だったのだが、きちんと聞いていたらしい王子は驚いたようにオレを見つめる。
こうなったら、本当に。

「だから。こうなったら面倒見てやるって言ってんだよ」

ヤケになりすぎて話が飛びすぎている気もしたが、この際関係ない。
大体、オレがこんな事を口走る原因はこの、目の前にいる王子殿下なのだ。
こいつが…もしかしたら嫉妬してくれたんじゃあないか、そう思ってしまったから。

しかし、そんなオレの思いにも気付いていない王子殿下は、何度も何度も目を瞬いて。

「え、えっと?つまり、ファレナ王家専属の探偵って事ですか?」

首を傾げ、まさかといった様子でオレを見つめるのみだった。

(ここまで来ると、鈍いにも程があるな…)

ぼんやりと思いながら、落としたキセルを拾って再び煙草の火をつける。
そうしてから、オレは決意した言葉を口に出した。

「…違う」
「えっ、じゃあ何…」
「お前専属だ」
「僕?」
「あぁ。お前見てるとしっかりしてるんだか危なっかしいんだか分かんねーからな。オレが見ててやる」

そこまで言ってから、オレはすっきりとした気分で煙草を吸い始める。
自分の言葉がある意味…プロポーズと言われるものだったんじゃあないか?とも思えた。
だが、どうせこいつには通用していないのだろう。
そう思ったから、あっさりと言えたのだ。そうでなければ、この先言えたかどうかも不明だ。
一服してから王子に目を向けると、まじまじとオレを見ている事に気付いた。
(他人からの視線にはすぐ気付くオレだが、こいつ相手じゃ意味が無い。ただ、オレが警戒していないから。)

「・・・」
「何だよ?」

訝しむように問うと、王子は苦笑して

「いえ…なんか馬鹿にされてるのかなーと…」
「かもな」

オレの言葉の真意にも気付かない様子でいるものだから、呆れながらも肯定してやる。
すると案の定、王子は怒りを込めた声を上げた。

「なっ!」
「冗談だ」

その様子が余りにも可愛くて、可笑しくて。オレは思わず笑ってしまった。
王子はオレの様子を見て頬を膨らませ、

「う…く、悔しいです。僕、いつかシグレさんより大人になってみせますからね!心配されないように!」

そう、自信たっぷりに宣言したのだ。
オレの提案を否定しない様子にこっそりと安堵しながらも、オレも負けじと自信たっぷりに笑ってやった。

「ほー」
「だからそれまで、ずっと居て下さいよ!絶対!」
「…あぁ、分かった」

王子の言葉に、そしてその約束に。
どれだけオレが安心してしまったかなんて、こいつはきっと知らないんだろう。


こいつがオレを否定しないこと。
これからも一緒にいられるのだということ。
ただの口約束ではあるけれど…オレにとっては、それだけで十分だった。
とりあえず、今後もこいつの隣にいられる理由が出来ただけで…良しとしようじゃあないか。


* * * * * * * * * *

ここまでお付き合い下さり有難う御座いました。
それにしても、話うまくまとまってない感がひしひしと…。
とりあえず王子に嫉妬させてみたかったのと
ED後もシグレと王子が一緒にいられるように、約束してもらいたかったのです。



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