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幻水5、シグレ主 12話目。
家族を大切にしている王子のはなし。
シリアス寄りです。


* * * * *

絶好の昼寝日和、いつもの昼寝場所に行くと、そこには先客がいた。
先客とはいっても、直ぐに誰なのかは分かった。
こんな穴場を知っているのは、オレと…あの、王子くらいしかいない。
現に、無防備な先客の後姿は見慣れたものだった。
太陽の光が当たって一層綺麗に輝く銀色の髪、闘いに向いているとは思えない、華奢な身体。それでも真っ直ぐに戦い続けている…そう、王子殿下その人だ。
座り込んでいた王子は横になって眠る事もなく熱心に何かやっていて、何かと思って覗きこんだ。

「何してんだ?」
「あっ、シグレさん。何、って…武器の手入れ、ですよ」

どこか自慢げに、持っている三節根を差し出してくる王子。
オレがそれを奪うなんて事は考えもしていないのだろう。
信頼されていると言えば聞こえはいいが…この王子はきっと、この城に居る仲間全員を信頼しているのだろう。

(オレが特別なワケじゃあ、ない。)

しかしそんな思いは微塵も見せず、オレは呆れて聞き返す。

「手入れェ?お前、それならドンゴがやってたじゃねぇか」
「それはそうなんですけど…自分でもやらないと落ち着かなくて」

『落ち着かない』なんて戦いから無縁だった王子様の言葉とは思えないが、現に目の前にいる王子殿下は、その三節根を大事そうに抱えている。
こんな馬鹿みたいに真っ直ぐな人間が、嘘をついている訳がない。
オレは呆れながらも、王子の持っている三節根をじろじろと無遠慮に眺める。
すると王子は、オレがソレに興味を持ったと思ったのか、嬉しそうに話し出した。

「それに…この三烈棍は、母から譲り受けたものなんです」
「…ヘェ」
「あとですね、この耳飾りは父上から譲り受けたものなんですよ」

愛おしいとでもいうように三節根(三烈根、というらしい))を優しく撫で、片方の手では耳に付けているピアスに触れる。
両親から受け継いだもの。それをこの王子は、心から大事にしているのだろう。
太陽の光が当たってきらきらと輝く三烈根とピアスが、王子の想いを象徴しているかのように思えた。
そう思って、オレはついつい口に出してしまったのだ。

「……大事にしてんだな」
「はい。今となっては、両親の形見…になっちゃいましたけど」
「っ、あー…わりぃ」

そうして、直ぐに後悔する事になった言葉。
仲間達に囲まれて、幸せそうに微笑む王子からは想像も出来ない事ではあるが…こいつは、両親を殺されているのだ。
しかも、昔…オレがいた組織の奴らが原因で。
それが悔しくて、自分が嫌になってオレは視線を逸らす。
けれど王子は驚いたように首を振って弁解を始めた。

「あっ、気にしないで下さい!両親の形見には違いないですけど、僕は、これを譲り受けた事を誇りに思ってるんです」
「……そう、か」
「はい。僕が戦っていく為に重要なものなんです。父上と母上には感謝してます。…返しきれないくらいに」

言って、三烈根を抱き締める王子。両親を思い出しているのか、それとも…戦いへの決意を込めているのか。
どちらにしてもこの王子は、なんて…強いのだろう。
両親を殺され、妹を奪われて…それでも真っ直ぐに受け入れている。
オレなんて、あの組織を抜け出して今の状態になるまで…何年もかかったというのに。

それだけ…家族が、仲間が大事なのだろう。そう思えた。

(特別に、なんて考えるな。分かってた事だ。こいつが何よりも大事にしているものは、家族と、仲間。オレが特別になれるなんて事は…)

有り得ない事だ。
そう、心の中で呟いた。

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