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テニプリ・亜久津と巴のはなし。
亜久津誕生日ネタです。
亜久津誕生日ネタです。
* * * * *
気付いた時にはもう遅くて、それでも。
携帯電話の通話ボタンを慌てて押して、緊張しながらも亜久津さんが電話に出るのを待つ。
(あぁ、もう、最悪だ!)
自己嫌悪に陥りながら、言うべき言葉を考える。
どうやって謝ろう?許してもらえるだろうか?そんな事ばかりが頭に浮かぶ。
そうして、電話が繋がった途端、私は堰を切ったように喋りだした。
「亜久津さんごめんなさい!そしておめでとうございます!」
「…うっせぇ、耳に響く」
「あっ、ごめんなさい!」
勢いのままに喋っていた私は、亜久津さんの言葉で我に返る。
すると受話器越しに亜久津さんの呆れた声が聞こえてきた。
「…で?」
「はい?」
「何がごめんだ。意味分かんねーだろうが」
そう言われて、私は亜久津さんの言葉に疑問を持つしかなかった。
「えっ?あ、あれ?昨日、亜久津さんの誕生日でしたよね?私、部活で忙しくて電話も何も出来なかったので今更ながらも謝ったんですけど…」
焦りながら、壁に掛けてあるカレンダーを見て、今日の日付を確認してみる。
何度見直しても、今日の日付は4月3日。亜久津さんの誕生日はすでに過ぎているから、私は首をひねるしかない。
すると、再び受話器の向こうから亜久津さんの呆れた声がやってきた。
「…馬鹿か、テメーは」
「えっ?な、何でですか!」
馬鹿にされて、ついつい声を荒げてしまった。それでも亜久津さんは気にする様子もなく、淡々と答えてくれる。
「俺のいる場所をどこだと思ってやがる」
「そりゃあもちろん、アメリカですよ!」
「そうだ。…で?」
「はぁ?私も意味が分からないんですけども…」
亜久津さんが何を言いたいのかさっぱり掴めなくて、私は再び首をひねる。
すると、深い深い溜め息が受話器の向こうから聞こえた。
「…時差、って知ってるか?」
時差、と言われて考えてみる。そりゃあ、私だって外国と日本では時差がある事くらい、って・・・
「えっ、あ…あー!!」
はたと思い当たった答え。亜久津さんが呆れた答えが漸く理解できた。
(時差、時差ね!そうだ、アメリカって日本より・・・!)
その答えに気付いて慌て始める私に、受話器の向こうから本日何回目かの呆れた声が聞こえた。
「分かったかこの馬鹿野郎が」
「うぅ…返す言葉もございません…」
対する私は自分の馬鹿さ加減に自分でも呆れながら、しゅんと項垂れるしかなかった。
受話器越しでも、亜久津さんが呆れる様子が想像できる。(あぁ、もう、やっぱり最悪だ!)
「…フン。用事は終わりか?じゃあな」
「あっ、ちょ、ちょっと待って下さい!」
「んだよ」
思った通り、亜久津さんは呆れた声音で。
すぐに切られそうになったのを引き止め、私は本来の目的だけでも果たそうと思い直す。
「あの、…誕生日、おめでとうございます」
「…あぁ」
「私、また会いに行きますから!待ってて下さいね!」
せっかくの誕生日なのだから、せめて『おめでとう』くらいは言いたかった。
それに、すぐに会える距離にはいないし、今から会いに行く事は出来ないから、せめて約束だけでもしておきたかった。
勢いのままに自分の想いを告げると、亜久津さんは無言のまま…
「・・・お前は来んな」
そんな一言が返ってきた。
私は衝撃を受けて、慌ててどういう事なのか聞こうと言葉を捜す。
「えっ?でも」
「お前がこっち来たら危なっかしくてしょうがねぇ。…面倒くせぇが、俺がそっちに行ってやる」
すると、亜久津さんは私の言葉を否定する訳ではなく・・・『日本に行く』という約束をしてくれたのだ。
「え…ほっ、ほんとですか!?」
その言葉を聞いて、私は嬉しさと驚きの混じった声を上げる。
すると亜久津さんはうんざりしたように溜息をついて。
「…だから、いちいち大声出すなこの馬鹿」
「あ、ごめんなさい!でも嬉しくて!」
「…あー、そうかよ」
「はい!」
それでもどこか嬉しそうな声だったから、私も嬉しくて笑顔で返事を返したのだった。
・・・それにしても…。
彼の誕生日だというのに、私が嬉しくなってどうするんだろう?
なんて、電話を切ってから気付いたけれど、もう遅い。
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