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シンクと再会したアニス。
シンアニというかただの喧嘩ネタ。


* * * * *

シンクが嫌いだ。
イオン様と同じ、レプリカイオンで…導師となるべくして生まれたのに、あんなにも…あんなにも、違うなんて。
シンクが嫌いだ。
イオン様の真似をして、私に話しかけるから。もうどこにもいない、イオン様を思い出させるから。
でも、一番嫌いなのは…自分自身だ。
シンクとイオン様は違うのに…、全くの別人だと分かっているくせに、つい重ねてしまう自分が、嫌いだ。


ケセドニアでシンクに会ってからというもの、ずっと気になっている。
生きていたんだと知った瞬間、安心してしまった。良かった、と思ってしまった。
けれど預言士を騙っている姿を見て、嫌な気持ちになった。どうして、って。イオン様を馬鹿にしてるの、って。
シンクが何のためにそんな事をしているのか、それは分かりきっている。総長の指示に従って…ただ、任務を遂行しているだけ。

…それが分かっているのに。

「あーあっ、もう!やめやめ!シンクの事なんか知るかーもー!」
ケセドニアの港には誰一人としていない。それを知っていたから、大声で言い放った。
しかし。
「そうしてくれると有り難いね」
「!!!」

聞き慣れた声が背後から聞こえ、慌てて振り返る。
するとそこには…見慣れた、あの顔。あの人に瓜二つの、あいつ。
「あ…っ!?」
「こんな所で人の陰口?アンタも暇だね」
「ななっ、なっ…」
なんでここに!?と言いたいのに、口が震えて声が出ない。
そんな私を鼻で笑い、シンクは見下したような視線を私に投げ掛ける。

(あぁ…なんて、なんて)


「つめたい…」
「は?何、頭までおかしくなったの?」
「やっぱり、イオンさまとはちが…」
「っ、アイツと比べるなっ!!」

言いかけた言葉はシンクにあっさりとかき消される。それと同時に肩を勢いよく押され、ぐらりと体が傾いた。
気付けば倒れた私の上にはシンクがいて。
目はギラギラと光り、怒りの表情が窺えた。そこでようやく我に返り、私も思いきり睨み付けてからシンクを引き離そうともがき出す。
「何…すんのこのアホ!アホシンク!」
「煩い!」
けれどそんな私の抵抗も虚しくあっさりと両腕を掴まれて。
そうなるともう、シンクの力には敵う訳もなく…私の力一杯の足掻きは空振りに終わる。
(あぁ、私ってばこんな所で殺されるのかな?)
ふとそんな考えが浮かんだ。

「どいつもこいつも導師導師…煩いんだよ!僕は…あんな奴とは違う!」

そんな事を考えていた私とは裏腹に、シンクは憎しみの言葉を吐き続ける。
どう見ても怒ってる。目はギラギラとした光を増し、私の腕を掴む手にも力が入る。ぎりり、という音がしたのは気のせいか。何だか、麻痺しているみたいだ。
そして…怒ってるのは分かってるのに……なぜだか、泣きそうにも見えた。

―――イオン様とは、違う。

分かっていたはずなのに…、別人だと知っているのに、勘違いしていたと漸く気付いた。
「…シンク」
「何だよ…今更命乞い?そんな事したって」
「ごめん」
「っ、な、何?」

私の言葉に動揺したのか、シンクの力が少し緩んだ。私は泣きそうになりながらも、あの人の名前を言おうとぎゅっと自分の手を握り締める。

「あんた、やっぱり…イオン様とは違うよね。別人だよね。…分かってたけど、今更気付いた。だからごめん」
「…意味が分からないんだけど」
「だからっ、…シンクはシンクだって言ってんの!もーいい加減離してよ」

我ながら、なんて我儘な事を言っているんだろうと思う。
今更?漸く?…どちらも違う。最初から分かってたんだ。それを受け入れようとしていなかっただけ。
唖然とした表情のシンクは、私の言葉を聞いてから固まったままだ。
今なら、と掴まれていた腕からするりと抜け出して、私は立ち上がる。
するとシンクもびくり、と震えてからゆっくりと立ち上がった。さっきまでとは違って…怒りの表情ではなかった。初めて見る、シンクの表情。
今思えば…シンクはいつだって、イオン様とは全く違った表情しか見せてこなかった。
それを今更気付くなんて、私はなんて馬鹿なんだろう。ルークに馬鹿、なんて言ってたけど、私だって馬鹿だ、大馬鹿だ。

「バッカじゃないの、アンタ」
「気が合うね。私もそう思ってたトコ」
「ふん…」

あ、泣きそう。シンクが泣きそう。何でって言われても分からないけど、泣きそうに見えた。
そこでふと、目が合った。イオン様とは違う…けれど、優しい光が宿っている瞳。あんなにひどい奴なのに、そう思えた。
すると突然、シンクは私に背を向けて歩き出す。私は慌てて追いかけようと声をかけた。

「あ、ちょっと!どこ行くのよ!」
「…気が削がれた。まだ殺さないであげるよ」
「な…残念でした!私は死ぬ気なんて全っ然ありませんー!」

見えないのをいい事に、思いっきり舌を出してやると、何故だか肩を竦められた。

「…アンタさぁ」
「なっ、何よ」

そこでシンクの言葉をしっかり聞き取ろうと私はしっかりと、シンクの背中を見つめ続ける。
するとシンクは突然振り返り…なんと、笑っていた。

「本当に…馬鹿だよね、アンタ」
「あ、な……ば、馬鹿って言った奴が馬鹿なんだからね、馬鹿シンク!」
「あっそう。…じゃあね」

言うだけ言って、シンクは再び私に背を向けて歩き出す。

(何よ何よ、言いたい放題…)

もう引き止める気も起きず、無言でシンクを見送った。ひらり、と白いコートの裾が翻る。

(白い服でも、やっぱりイオン様とは違う。別人だもんね、当たり前、か…)

そんな当たり前の事にも気付かなかった、気付こうとしなかった自分に呆れかえる。

「…私も帰ろ」

誰もいなくなった港でぽつりと呟いてから、私は歩き出した。

(あーあっ、もう。ほんと馬鹿だわ、私)
そう思って、深い溜め息。
自分の馬鹿さ加減に呆れながら、綺麗な星空を見上げてから、私は宿屋へと向かって走り出した。



シンクが嫌いだ。
私を馬鹿にするだけじゃなく、イオン様を侮辱するから。
シンクが嫌いだ。
私やイオン様だけじゃなく、フローリアンに対してまでも辛い言葉を投げかけるから。

けれど、けれど。
…ほんの少しだけ、シンクが優しいだなんて思ったり、イオン様とは全く違った表情が見れて…もっと彼の色んな表情が見たい、だなんて思った自分が…嫌いだ。

気の迷い、と思い込んで目を閉じても、真っ先に浮かぶのがシンクの顔だなんて…自分の思考回路が嫌いになりそうだ。

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