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幻水5、シグレ主 13話目。
ケーキを食べるふたり。


* * * * *

珍しく食堂に居る王子を見かけ、気付けば足が向かっていた。
何を食べているのかと思って見てみれば、オレには縁のない…甘そうなケーキが目に入った。

「…何食ってんだ?」
「えっ?何って…、ミアキスに貰ったチーズケーキです。久しぶりに見たので、つい…」

王子は突然声をかけられて驚いたように振り向いたが、オレだと分かるとほっとしたような表情を覗かせる。
どこか嬉しそうに見えるのはきっと、テーブルの上にあるケーキが理由なのだろう。
思えばこいつの味の好みなどほとんど知らない(事務所に来るたび和菓子を食べる姿は見ていたが)、という事に気付き、ほんの少しだけ興味が沸いた。

「…ふぅん。お前、甘いもんが好きなのか?」
「はい!ケーキはよくリムと叔母上と…みんなでよく食べてましたから、特に」

嬉しそうに、けれどどこか寂しそうに遠くを見つめる王子の姿を見て、質問を間違えたか、と自己嫌悪に陥った。
どうも見ていられない、そう思ってオレは視線を逸らす。

「………あ、そ」
「そうだ!シグレさんも食べますか?すごく美味しいですよ」

しかし、その視線はあっさりと王子の元へと戻った。
王子の提案が突然すぎて、オレは何事かと王子へ目を向ける。
すると先刻までの表情はどこへやら、楽しそうに微笑う王子と目が合った。

「は?オレは別に…」
「あ、心配しなくても大丈夫です!まだ沢山あるって聞きましたから」
「いや、あのな」
「このチーズケーキは本当に美味しいんですよ!ですからシグレさんにもぜひ!」

オレの意見など聞きもせず(珍しい事もあるものだ。それだけ甘味が好きなのか)、王子はずい、とフォークに刺さったチーズケーキを差し出してきた。
思わず後退りしてしまったが、そんなオレの様子など気にしていないのかそれともオレが食べるとでも本気で思っているのか…王子は、きらきらと輝いた瞳でオレを見つめている。

(このまま食えってのか?)

ふと、王子に差し出されたチーズケーキを食べる自分の姿を想像し…あまりにも情けない光景だ、と溜め息をつく。
馬鹿馬鹿しい、と思うと同時に、好いている相手にこんな事をされて、少しでもどきりとした自分自身が恥ずかしかった。
しかし…オレは、それ以上に。

(それで…こいつが喜ぶなら)

そう考えて、行動に移そうと思った事が…あまりにも。

「おい」
「はい?食べますか?」

思い切って口を開くと、王子はぱぁ、と表情を輝かせ。
オレは先刻までの恥ずかしさなどなかったかのように、思い切った行動に出た。
ぐい、と王子の手首を引き、予想以上に細い手首に驚きながらも王子の持ったフォークを口に持っていく。
そのままフォークに刺さったケーキを食べ、王子を見やると何が起きたのかすぐには理解できなかったらしく、目を瞬かせていた。

「え、あの」
「……まぁまぁ、だな」

言って手を放すと、王子は漸く我に返った。
まさかこんな行動に出られるとは思わなかったのか(それはそうだろう。オレだってする気はなかった)ケーキのなくなったフォークとオレとを見比べている。

それを見て、つい笑ってしまった。
驚いている王子の表情と…あまりにも恥ずかしい奴と思う、自分自身に。


* * * * * * * * * *

チーズケーキを食べて思いついた話。
特にオチも何もないです。
って、それはいつもの事か…!


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