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幻水5、シグレ主 8話目。
事務所メンバーと王子様。
事務所メンバーと王子様。
* * * * *
探偵事務所のメンバーが城にやってきてからというもの、僕は毎日のように足を運んでいる。
どうしてかって、居心地が良いから、としか言い様がない。
本当の家族に暖かくて、優しくて…それが本当に心地よかったから、僕は自然と足を運んでいた。
オボロさんに調査依頼をしたり
シグレさんにはお勧めの昼寝場所を教えてもらったり
サギリさんとはゲッシュさんの畑で蒔いた種の様子を話したり
フヨウさんにはナントカ産のお茶にはこの茶菓子が合うとか、どこのご飯が美味しい、とか…
そうやって、事務所へ通うのが日課となっていた、そんな時だった。
「王子様、ダレ目当てで来てるんです?」
「…はい?」
なんて、フヨウさんの質問がやってきたのは。
笑顔で聞いてくるフヨウさんの質問の意図が分からず、僕は目を白黒させる。
そんな僕の様子も気にせず、フヨウさんは一気に捲くし立てた。
「サギリちゃん?それともシグレちゃん?」
「なっ」「えっ」
僕だけでなく、名前を呼ばれた二人も驚いた様子でフヨウさんを見つめる。
どうしたものかと考える間にも、彼女の勢いは止まる事がなかった。
「あ、あの」
「違うの?じゃあセンセ?王子様ってば渋いわねぇ」
「いえ、ですから」
「あぁっ!もしかして私だった?ごめんなさいね、私、センセのトコロで一生働くって決めてるから」
「~~、ですから、違います!」
結局、いい考えが何も浮かばなかった僕は、覚悟を決めて大声をあげた。
すると…フヨウさんは大きな瞳を丸くして、ぽかんとした表情でようやく止まってくれたのだった。
しかしそれと同時に、全員の視線が一斉に僕のもとへとやってくる。
それがどうにも耐えられなくて(またやってしまった!)俯いてから、ぽつりと呟く。
「その。僕にとっては皆さん全員が大切な仲間ですから…決められません」
僕の答えは、普段から言っている事だった。
今更だとは思ったけれど…ここにいる全員が僕にとって大切な仲間であることは事実だ。そう思い直して、僕は顔を上げる。
するとフヨウさんがにこにこと笑いながら、緩む口元を隠しながらシグレさんに話しかけている姿が目に入った。
「あら、そうなの?良かったわねぇ、シグレちゃん」
「いやいや、むしろご愁傷様、ではないですか?」
「…私もそう思う」
「・・・うるせぇ」
「?」
フヨウさん達の言葉を聞いて、シグレさんがうんざりしたように呟いた。
僕にはどうしてシグレさんの機嫌が悪いのか、どうしてフヨウさん達は嬉しそうなのか…まったく意味が分からなくて首を傾げる。
すると、フヨウさんの視線がこちらに向き、笑顔のままで再び質問された。
「あ、じゃあ最後に。誰との会話が一番楽しい?」
先刻とは少し違う、けれど難しい質問をされて僕は戸惑いながらも考えてみる。
(誰、と言われると…あ。)
考えたところで、パッと浮かんできたのはただ一人。
僕が一番お世話になっている(…そしてきっと、呆れられている)人物が浮かび上がってきた。
他の人が全く浮かんでこなかった事に自分でも驚きながらも、その答えを口に出した。
「えっと…誰との会話も楽しいんですけど、しいて言うなら…シグレさん、です」
「!」
「あら、どうして?」
気のせいか、一瞬だけ驚いたようにシグレさんの肩が動いたような気がしたけれど、見直す暇もなくフヨウさんが尋ねてくる。
段々と答えるのが恥ずかしくなってきた僕は、戸惑いを隠しきれない。
どうして、だなんて理由を答えるハメになるなんて、考えてもいなかったから。
それでもフヨウさんの興味津々といった顔を見ると答えない訳にもいかなくて…溜息と共に、答える覚悟をした。
「わ、笑わないで下さいね」
「えぇ、もちろん」
「秘密も厳守しますとも」
「当然、だわ」
「だな」
この場にいる全員が僕の提案を快諾してくれる。やっぱりいい人達だなぁとしみじみ思う。
緊張も少し解れ、僕は肩の力を抜いて話し始めた。
「ありがとうございます。…僕、宮殿暮らしをしていた頃、稽古をサボって昼寝ってした事なかったんです。リオンにすぐ見つかるし、カイルもどこからかやってくるし」
「だろーな」
「それで、ですね。今の本拠地に来て、ようやくそれから解放されたというか…あ、別にリオンやカイルが来る事が嫌って訳じゃなくて。ただ、ゆっくりしたい時にゆっくりできる今の空間が凄く嬉しくて…だから、シグレさんに本拠地内での絶好の昼寝場所なんかを教えてもらえるのが嬉しくて仕方ないんです」
軍のリーダーともあろうものが、と言われても仕方ない僕の話に、誰も否定はしなかった。それだけで安心してしまう。
それ所か、フヨウさんなんて「なるほど」、と言わんばかりに手を叩き、僕ににっこりと微笑んでくれた。
「だからシグレちゃんなのね」
「はい。あの、シグレさん、いつもありがとうございます」
はたと思い立って、僕はシグレさんに深々とお辞儀をする。僕がこうやってゆっくりとしていられるのも、きっとシグレさんのお陰だと思ったから。
(何故って、カイルやリオンから隠れる術を教えてくれたのもシグレさんだから)
でも、シグレさんは感謝なんて必要ないとばかりに顔を背け、煙草を吸い始めていた。
「…別に。ただの気紛れだ」
ふぅ、と息を吐く音と共に、シグレさんは呟いた。その様子を見たフヨウさんはもう、と少しだけ怒ったように(でも、きっと本当は怒っていない。だってフヨウさんは優しい人だから)シグレさんを咎める。
「素直じゃないわねぇ」
「まぁまぁ。二人だけの秘密をこれ以上教えていただくのも悪いですし、これくらいにしましょう」
「なっ」「え?」
呆れた様子のフヨウさんとは逆に、オボロさんは微笑んだままフヨウさんを宥める。
僕は意味の分からぬまま首を傾げる。すると隣にいたサギリさんが僕の肩に手を置いた。
何かと思って視線を向けると、サギリさんもオボロさんと同じく微笑みを浮かべたままで。
「…何でもないから、王子様は気にしないで」
「は、はぁ…」
そう言われてしまって、益々釈然としないまま、僕は頭を悩ませるしかなかった。
目の前ではフヨウさんが拳を握り締め、オボロさんとサギリさんは相変わらず微笑みを絶やさぬまま。
「シグレちゃん、ファイトよ!」
「大丈夫です、邪魔はしませんから」
「…出歯亀は、するかもしれないけど」
「余計悪いだろーが…」
「??」
どういう事なのか聞くにしても、渋い顔をしているシグレさんに聞く訳にもいかず…当分、この謎は解けそうにもない。
* * * * * * * * * *
うちの探偵事務所メンバーと王子は仲が良いということで。
さりげなくシグレを応援している家族っていうのがいいかなと思ったのです…!
進展はまだまだ遠いけれど(笑)、シグレには頑張ってほしいものです。
探偵事務所のメンバーが城にやってきてからというもの、僕は毎日のように足を運んでいる。
どうしてかって、居心地が良いから、としか言い様がない。
本当の家族に暖かくて、優しくて…それが本当に心地よかったから、僕は自然と足を運んでいた。
オボロさんに調査依頼をしたり
シグレさんにはお勧めの昼寝場所を教えてもらったり
サギリさんとはゲッシュさんの畑で蒔いた種の様子を話したり
フヨウさんにはナントカ産のお茶にはこの茶菓子が合うとか、どこのご飯が美味しい、とか…
そうやって、事務所へ通うのが日課となっていた、そんな時だった。
「王子様、ダレ目当てで来てるんです?」
「…はい?」
なんて、フヨウさんの質問がやってきたのは。
笑顔で聞いてくるフヨウさんの質問の意図が分からず、僕は目を白黒させる。
そんな僕の様子も気にせず、フヨウさんは一気に捲くし立てた。
「サギリちゃん?それともシグレちゃん?」
「なっ」「えっ」
僕だけでなく、名前を呼ばれた二人も驚いた様子でフヨウさんを見つめる。
どうしたものかと考える間にも、彼女の勢いは止まる事がなかった。
「あ、あの」
「違うの?じゃあセンセ?王子様ってば渋いわねぇ」
「いえ、ですから」
「あぁっ!もしかして私だった?ごめんなさいね、私、センセのトコロで一生働くって決めてるから」
「~~、ですから、違います!」
結局、いい考えが何も浮かばなかった僕は、覚悟を決めて大声をあげた。
すると…フヨウさんは大きな瞳を丸くして、ぽかんとした表情でようやく止まってくれたのだった。
しかしそれと同時に、全員の視線が一斉に僕のもとへとやってくる。
それがどうにも耐えられなくて(またやってしまった!)俯いてから、ぽつりと呟く。
「その。僕にとっては皆さん全員が大切な仲間ですから…決められません」
僕の答えは、普段から言っている事だった。
今更だとは思ったけれど…ここにいる全員が僕にとって大切な仲間であることは事実だ。そう思い直して、僕は顔を上げる。
するとフヨウさんがにこにこと笑いながら、緩む口元を隠しながらシグレさんに話しかけている姿が目に入った。
「あら、そうなの?良かったわねぇ、シグレちゃん」
「いやいや、むしろご愁傷様、ではないですか?」
「…私もそう思う」
「・・・うるせぇ」
「?」
フヨウさん達の言葉を聞いて、シグレさんがうんざりしたように呟いた。
僕にはどうしてシグレさんの機嫌が悪いのか、どうしてフヨウさん達は嬉しそうなのか…まったく意味が分からなくて首を傾げる。
すると、フヨウさんの視線がこちらに向き、笑顔のままで再び質問された。
「あ、じゃあ最後に。誰との会話が一番楽しい?」
先刻とは少し違う、けれど難しい質問をされて僕は戸惑いながらも考えてみる。
(誰、と言われると…あ。)
考えたところで、パッと浮かんできたのはただ一人。
僕が一番お世話になっている(…そしてきっと、呆れられている)人物が浮かび上がってきた。
他の人が全く浮かんでこなかった事に自分でも驚きながらも、その答えを口に出した。
「えっと…誰との会話も楽しいんですけど、しいて言うなら…シグレさん、です」
「!」
「あら、どうして?」
気のせいか、一瞬だけ驚いたようにシグレさんの肩が動いたような気がしたけれど、見直す暇もなくフヨウさんが尋ねてくる。
段々と答えるのが恥ずかしくなってきた僕は、戸惑いを隠しきれない。
どうして、だなんて理由を答えるハメになるなんて、考えてもいなかったから。
それでもフヨウさんの興味津々といった顔を見ると答えない訳にもいかなくて…溜息と共に、答える覚悟をした。
「わ、笑わないで下さいね」
「えぇ、もちろん」
「秘密も厳守しますとも」
「当然、だわ」
「だな」
この場にいる全員が僕の提案を快諾してくれる。やっぱりいい人達だなぁとしみじみ思う。
緊張も少し解れ、僕は肩の力を抜いて話し始めた。
「ありがとうございます。…僕、宮殿暮らしをしていた頃、稽古をサボって昼寝ってした事なかったんです。リオンにすぐ見つかるし、カイルもどこからかやってくるし」
「だろーな」
「それで、ですね。今の本拠地に来て、ようやくそれから解放されたというか…あ、別にリオンやカイルが来る事が嫌って訳じゃなくて。ただ、ゆっくりしたい時にゆっくりできる今の空間が凄く嬉しくて…だから、シグレさんに本拠地内での絶好の昼寝場所なんかを教えてもらえるのが嬉しくて仕方ないんです」
軍のリーダーともあろうものが、と言われても仕方ない僕の話に、誰も否定はしなかった。それだけで安心してしまう。
それ所か、フヨウさんなんて「なるほど」、と言わんばかりに手を叩き、僕ににっこりと微笑んでくれた。
「だからシグレちゃんなのね」
「はい。あの、シグレさん、いつもありがとうございます」
はたと思い立って、僕はシグレさんに深々とお辞儀をする。僕がこうやってゆっくりとしていられるのも、きっとシグレさんのお陰だと思ったから。
(何故って、カイルやリオンから隠れる術を教えてくれたのもシグレさんだから)
でも、シグレさんは感謝なんて必要ないとばかりに顔を背け、煙草を吸い始めていた。
「…別に。ただの気紛れだ」
ふぅ、と息を吐く音と共に、シグレさんは呟いた。その様子を見たフヨウさんはもう、と少しだけ怒ったように(でも、きっと本当は怒っていない。だってフヨウさんは優しい人だから)シグレさんを咎める。
「素直じゃないわねぇ」
「まぁまぁ。二人だけの秘密をこれ以上教えていただくのも悪いですし、これくらいにしましょう」
「なっ」「え?」
呆れた様子のフヨウさんとは逆に、オボロさんは微笑んだままフヨウさんを宥める。
僕は意味の分からぬまま首を傾げる。すると隣にいたサギリさんが僕の肩に手を置いた。
何かと思って視線を向けると、サギリさんもオボロさんと同じく微笑みを浮かべたままで。
「…何でもないから、王子様は気にしないで」
「は、はぁ…」
そう言われてしまって、益々釈然としないまま、僕は頭を悩ませるしかなかった。
目の前ではフヨウさんが拳を握り締め、オボロさんとサギリさんは相変わらず微笑みを絶やさぬまま。
「シグレちゃん、ファイトよ!」
「大丈夫です、邪魔はしませんから」
「…出歯亀は、するかもしれないけど」
「余計悪いだろーが…」
「??」
どういう事なのか聞くにしても、渋い顔をしているシグレさんに聞く訳にもいかず…当分、この謎は解けそうにもない。
* * * * * * * * * *
うちの探偵事務所メンバーと王子は仲が良いということで。
さりげなくシグレを応援している家族っていうのがいいかなと思ったのです…!
進展はまだまだ遠いけれど(笑)、シグレには頑張ってほしいものです。
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