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幻水5、シグレ主 14話目。
暑さにやられるシグレと心配する王子。


* * * * *

空は快晴、出かけるには絶好の天候なのかもしれない。
しかし…こんな炎天下の中訓練をするだなんて、馬鹿げてる。


「あー、だりぃ…暑い…」

口に出すと、更に暑さが増していく気がするから不思議だ。
あぁ、まったく馬鹿げてる。
頬を伝う汗を拭い、オレはどっかりとその場に座り込む。
気付けば表情の変わらないサギリも、どこか疲れた様子で隣に座っていた。
そんなオレ達を見た王子は苦笑し、オレの隣に座り込んだ。

「やっぱり、暑いですよねぇ」
「……暑いに決まってんだろ。やってらんねぇ」

愚痴を零すと、王子は再び苦笑して、何かを考え始めたように俯いた。
どうやら、帰還しようかどうかを迷っているらしい。
こんな中で訓練を続けても、体力が無くなっていくだけだ。
そう言ってやろうかと口を開くと、王子は何かを思いついたように顔を上げた。

「とりあえず上着を脱いでみる、とか!」
「ハイハイ…ってそれだけかよ?」

言われた通りに上着を脱いではみたものの、王子の言葉がそこで途切れている為まさかと思って先を促す。
すると、王子はどこか申し訳なさそうに微笑んで。

「はい、まぁ、それだけです、けど…」
「お前なぁ…!」
「…シグレ、五月蝿い」

声を荒げそうになったところを、サギリの一言ではたと我に返る。
隣に目をやると、笑顔でオレを見つめるサギリと目が合った。
笑顔なのにも関わらず、どこか怒りを含んだ瞳に見つめられ、オレは視線を逸らすしかなかった。

(オレのせいかよ…)

とは思っても強く言えない自分に嫌気が差す。暑さの所為で、余計に苛々してくる。
そんなオレに、王子は心配そうに声をかけてきた。

「あの…シグレさん」
「何だよ」

睨むようにして目を向けたが、王子はオレの視線などものともせずに、何故だか手を差し出して。

「これなら冷たいですよ?」
「……!?」

そう言って、王子の手がオレの顔に触れる。
ひんやりとした手の平が心地良いといえばいいのだが、これは、しかし。

(冷たいからって手を差し出すか、普通!?)

触れられている所からどんどん熱を帯びてゆく気がして、思わず王子の手を取り顔から離す。
王子はオレの行動に驚いたように目を瞬かせてはいたものの、オレの手を離そうともしない。ただ、不思議そうに見つめるだけ。

「シグレさん?どうしたんですか?」
「…何でもねぇ」
「あ、冷たくなかったですか?生温かった、とか」
「違ぇよ。別に、気にすんな」
「はぁ…??」

言い訳するのも面倒で(大体、恥ずかしい理由だらけだ)、オレは掴んだままの手を離して立ち上がった。
隣で何か言いたげにしていたサギリも、溜息を零してから立ち上がる。

「シグレ…王子様、驚いてる」
「…分かってるっての。…あぁ、面倒くせぇ」
「……」

がりがりと頭を掻いて渋るオレに、サギリは諦めたようにもう一度溜息を零す。
そして王子は、訳の分からない、といった表情でオレ達を見上げていた。
どうしたら良いものか、だなんて分かるはずのないオレは、ただ…

「暑いし面倒くせぇから、帰るぞ」

それだけ言って、王子に手を差し伸べる。すると王子はオレと、オレの手を交互に見やってから

「…はい、分かりました」

どこか嬉しそうに微笑んで、何の迷いもなく手を差し出してきたのだった。


* * * * * * * * * *

ここ最近、暑い日が続いていたので思いついた話。
最後がちょっと弱い、か、な…?(いつもの事です)

シグレは暑がりで寒がりです。我侭ですね(笑)
あ、シグレと王子の横にサギリがいるのは趣味です。
面倒くさがるシグレをサギリが無理矢理にでも引っ張って、
王子の所に連れてゆくのがとても良いと思うので…!
そして、サギリは常に王子の味方です。
あの子も王子が大好きだから…!(シグレ、ごめん)

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