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幻水5、シグレ主 15話目。
七夕ネタ。


* * * * *

「タナバタ?」
「はい、七夕です。こうやって、笹に願い事を書いた短冊をつけて…織姫と彦星が出会えたら、願い事が叶うんですよ」

廊下で呼び止められ、こいつの説明を聞くハメになったのはほんの数分前。
目の前には両手に沢山の紙切れを持つ王子殿下。何事かと思ったら、突然七夕とやらの行事を説明された。
どうやらこの王子殿下は城中の人間にこの紙切れを配り、願い事を書いてもらっているらしい。
まったくもって、ご苦労な事だ。

「…はぁ。よくは分かんねーけど、要はこれに願い事を書け、ってか」
「はい。もしかしたら叶うかも、ですよ?」

ただの言い伝えを信じきっているとでもいうのか、王子はその紙切れ…短冊を渡してきた。
受け取ったはいいものの、どうしたものかとオレは首を捻る。

「願い事、ねぇ…」
「ないんですか?」
「あー、まぁ、神サマに願うほど信心深くもねーし、そこまでして叶えたいものなんて」

と、そこで思い出したのは、目の前にいる王子との約束。

(お前専属だ)

以前交わした約束。
ただの口約束だったし、王子にしてみれば『専属』なんてものは慣れたもので、オレの考えなんて気付きもしないだろう。
けれどオレにしてみれば、あれは一世一代の大告白(言いすぎだとは思うが、今後言う事もないだろうから、敢えてそう言っておく)だった訳で。
その言葉の通りに、出来る事ならずっと…

「シグレさん?」
「っ、何でもねぇ。特に…ない、かもな」
「そうですか…」

言いたくなる言葉を呑み込んで、オレは視線を下へと移す。
と、王子の手の中に、何か書き込んである短冊がある事に気付いた。

「そういうお前は何を書いたんだよ」
「あ、僕ですか?」

王子が何を願うのか興味があったので、顔を上げて聞いてみる。

(まぁ、大体予想はつくけどな)

すると王子は待ってましたとばかりに笑い、その短冊をオレに見せてきた。
そこには…こいつの最も望んでいる願いを主張するかのように大きく

『全員生き残ってソルファレナ奪還!リムもミアキスも国民も…みんなを取り返す!』

と書かれていた。
予想通りの願い事に、オレは笑うしかない。

「…お前らしいな」
「あはは…」

つられて王子も笑い出す。少しは恥ずかしかったのか、ほんのりと頬が赤くなっていた。
その時ふと、短冊の裏にも何か書いてあるのが目に入った。
何かと思ってじっと目を凝らすと、裏面には小さく、こっそりと

『シグレさんがずっといてくれますように』

…そんな、オレの望みと同じ事が書いてあったのだ。
見間違い?目の錯覚?…いや、そんな筈はない。
こんなナリだから知られてもいないが視力は良いし、もし寝ぼけていたとしても、そんな間違いはしない。
そして、その願い事が一体どういう意味を持っているのか…知っているのはオレと、こいつだけだ。

「お前、それ」
「あ!み、見つかっちゃいましたか…」

短冊を指差すと、照れたように笑い、願いが2つなんて無理ですかね、なんて呟く王子。
その姿を見ていたら、自然と口が動いていた。

「…んな事願わなくたって、いてやるよ」
「えっ、本当ですか!?」

…そう、つい、言ってしまった。口が滑った。(こいつといるといつもこうだ)
どうしていつもこうなのか…それは間違いなく、オレがこの王子を気に入っているから。好きだから、だ。
だから、それくらいの願いなら叶えてやりたいと思ってしまう。
そしてオレ自身、しみじみと思うが…この考えは馬鹿馬鹿しい、としか言いようがない。
あぁ、本当に馬鹿馬鹿しい、とは思う。思うのだが。

「シグレさんとサギリさんとオボロさんとフヨウさん…皆さんのお仕事が忙しくても、ですか?」
「あぁ」

こうやってオレの話を聞いて顔を綻ばせる王子を見ると、仕方ないと思うのだ。
これだから、惚れた弱みというのは恐ろしい。

「よかったぁ~…僕、皆さんがいなくなるなんて、考えられなくて。そう言ってもらえて安心しました」

しかし…安心するような溜息と共に出た王子の言葉に、オレは耳を疑った。
そうして、王子の言葉を反芻する。

「……皆さん?」
「はい!シグレさんはもちろん、事務所の皆さんです!」
「………そーかよ」

何度も頷いて、王子は輝いた瞳をオレに向ける。
あぁ、こいつは嘘なんかついちゃいない。オレがこいつの言葉を勝手に解釈しただけの事だ…悔しい事に。

「本当にありがとうございます、シグレさん!」
「ドウイタシマシテ…」

満面の笑みを浮かべる王子とは逆に、オレは沈みきった気持ちをそのままに溜息を吐いた。


あぁ…矢張りというか、本当に馬鹿馬鹿しい。
こいつが鈍いのを忘れたのか。忘れていた訳じゃない、けれど…どうしても期待してしまう自分がいたのだ。
けれど、過度の期待なんてするものじゃあ、ない。

そんな事を思った、夏の午後。


* * * * * * * * * *

報われないなシグレ…!
けどあの、王子はシグレがいなくなる事を恐れていたわけです。
約束を覚えていてくれた事に喜びつつも、
家族ということで、ほら、他の皆さんも思い出してしまった訳で…!
(言い訳ですね…すみません…!)
それにしても、毎度口が滑ってばかりですねうちのシグレ…
ヘタレの象徴ということで、ひとつ。
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