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幻水5、シグレ主 17話目。
ここまで長かった!

* * * * *

あいつの傍にいたい。
その想いが日々強くなってゆく。
伝えたら王子は微笑んでくれるのだろうか。喜んでくれるのだろうか。



「傍にいて、いいのか?」
「えっ?」

思わず呟いていた言葉は、オレがずっと疑問に思っていた事だった。
聞こえないかと思ったのに、王子は聞き逃す事なく聞き返してきた。
じっとオレを見上げて返答を待つ王子の姿を見て、オレは覚悟を決めて話を続ける。

「オレは…オレのせいで、お前はこの前危険を冒した。下手すりゃお前が怪我してたんだ。それでも傍にいて…いいのか?」
「当たり前じゃないですか。シグレさんは、大事な仲間ですから」

予想通り、というべきか。
王子は微笑み頷いて、仲間だと信じるオレの言葉を純粋に喜んでいる。だから、オレの言葉の真意にも気付かない。
それがどうにも気に食わなくて、オレは吐き捨てるように言った。

「…オレは。お前のこと、仲間だとは思ってねぇ」
「え…」

オレの言葉に王子の顔が一瞬歪む。これは以前、オレの言葉を聞いて泣きそうな表情をした時にも見た。
いつもいつも…自分の所為で王子を傷付けていると思う。
それが分かってはいたけれど、湧き上がる感情も言葉も止める事は出来なかった。

「オレは。…お前が大事で、仲間なんかよりもっと…大事で。あの約束通り、ずっと傍にいてぇし…約束がなくたって、傍に、」
「……」
「けどよ、オレの所為でお前が傷ついて…倒れたらどうする?お前は笑って許すんだろうけどな、オレはオレを許せなくなる。お前の傍にいなけりゃよかった、そう思うに決まってる」

言い切って、重い溜め息をひとつ。
重い気分のまま王子に目をやると、王子は顔を俯けて肩を震わせていた。
今度こそ泣かせたか、と俯いたその顔を覗き込もうとした時。
王子の口がゆっくりと開き、掠れた声が漏れた。

「…んですか」
「あ?」
「誰がそんな事…決めたんですかっ!」

今まで聞いた事の無い、叫びにも似た声を上げて王子はこちらを睨むように見上げてきた。
その、怒りに満ちた声も怒りで肩を震わせる姿も初めて見るものだったが、そんな事より何よりも……驚いた。
何故って、今まで何が起きようとも泣きはしなかった(嬢ちゃんが倒れた時も、伯母が敵になったと知った時も泣かなかった)こいつが、今、オレの目の前で泣いていたのだ。

「お、おい」

先刻までの感情は何処へやら、オレは焦って王子の肩を抱く。
そんな事をしてどうなる訳でもないけれど、どうにかしてこいつを落ち着かせようと必死だった。
けれどやはりと言うべきか、王子の言葉も止まる事はなく…

「僕はっ…シグレさんが大事だから守りもするし、それで傷ついたって痛くも痒くもありません!嫌なのは、シグレさんがいなくなる事です!もう…、大事な人を失いたくなんか、ないんです…っ」

ぼろぼろと涙を零し、それを拭う事もせずに王子は一気に言い放つ。
その姿を見て、オレは思わず抱き締めてしまっていた。

「…悪かった」
「謝ったって、許したりしません…」

どうしたら良いのか分からないままに謝ってみたものの、王子は怒ったような拗ねたような声音のまま。
オレの胸に顔を埋めたまま、こちらを見ようともしない。

(どうしろってんだよ…オレには、謝る事しか出来ねぇのに)

王子の機嫌を直す為にもオレの気持ちを伝える為にも…
まずは謝る事が重要なのだろうという考えに行き着いて、深呼吸をしてからゆっくりと言葉を紡ぐ。

「本当に、オレが、悪かった…」
「……本当に悪いと、思ってますか…?」
「あぁ。だから…泣くな。お前に泣かれるとどうしたらいいか、分かんねーんだよ…」

自分でも不思議なくらい、素直な気持ちを口にする事が出来た。
気恥ずかしい気持ちもあったがそんなもの、今は無視だ。
こいつに泣かれるというのは本当に…居心地が、悪い。
泣かせたくなくて言ったはずの言葉で傷つけた挙句、どうしたら良いのか分からないままに戸惑う自分が馬鹿みたいだった。

(あぁ、本当にどうしようもねぇな)

再び重い気持ちのまま深い溜め息を吐くと、そこで漸く王子が顔を上げた。

「…じゃあ、もう一回、」
「あ?な、何だ」

泣き腫らした目のままで、それでも真っ直ぐに見つめてくる王子の視線が痛い。
それでもなんとかオレも真っ直ぐに見つめ返すと、王子はぎゅっとオレの服を握り…

「もう一度…約束、して下さい。離れないって。ずっと僕の傍に…隣りにいてくれるって」
「………」

言いきってから、王子の顔がどんどん朱に染まってゆくのが分かる。
何を言うのかと思った。
嫌われても仕方ない、もう傍になんかいられないと思った途端に、これだ。
あぁ、こいつはどうしてこうなんだ。オレの考えなんかお構いなしと言わんばかりに、全てをぶち壊してゆく。

「だめ、ですか…?」
「…お前なぁ…あークソ分かった、すりゃいいんだろ、すりゃあ」

(どこまで不安にさせれば気が済むんだ、オレは)

そう思ったら自分の葛藤が馬鹿げたものに思えてきて、オレは舌打ちをしてから王子の言葉にあっさりと了承する。
すると、先刻まで不安げに見上げていた王子の瞳が明るみを増した。

「…はい」
「オレはずっと、いや生涯、お前の隣りにいてやる。そんで、お前を守れるかどうかなんて知らねえけど…けどよ、オレは…お前の隣りに、いたい」

こうなったら、とオレは今までに悩みに悩んで言わずにいた言葉たちを全てぶつける事にした。
それがどれだけ我儘な事なのかも分かっているし、王子にとって迷惑な話である事も知っている。
けれど、言わずにはいられない。
こうなったのは、全部こいつの所為なのだ。オレが悩んでいた原因をすべて壊していったこいつの所為。

「…はい。僕もです。シグレさんの隣りにいて…僕も、あなたを守りたい、一緒にいたいです」
「そう、か…んじゃ、約束だな」
「はい!」

そう、先刻までの泣き顔が嘘のように満面の笑みを浮かべるこいつが悪い。
オレを喜ばせる為に言っているのではないかというような、そんな約束を交わしてくれた王子殿下。
こいつの所為でオレは…一生、こいつの傍から離れられない。

(臨むところだけど、な)

吹っ切れた気持ちで空を見上げると、きらきらと輝く太陽が祝福しているように見えた。


* * * * * * * * * *

長くなってしまいましたが、ここまでお読み下さった方ありがとうございます…!
シグレと王子をどうにかして両思いにしようとした結果が、これです。
王子がどうにも乙女化していてちょっと…という気もするのですが
まぁ、こんなのもアリかなと笑って許していただけるとありがたいです…


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