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DSS、ユーグ×カレルの話。

* * * * *

外はこんなにも良い天気で、ただそれだけの事が嬉しくて仕方なくって散歩していただけ。
でも、気付いた時にはユーグに手を引かれて走っていた。
遠くから聞こえてくる足音と気配がボク達に向ける殺意を消しきれていなかった、ただ、それだけで。

(あぁ、また追われてるのか)

これで何度目だろう。もう、数えてもキリがないから止めてしまった。
ボクはただ、ユーグと離れたくないから走るだけ。ただそれだけ。
遅れないように、と思っても、結局はユーグに引っ張られるようにして走っているのが現状で。
ユーグは何も言わず、ボクの手を離す事もせず。

(逃げ切ったらお礼、言わないと)


これが、日常。
平穏なんてものは有り得ない。






「ふぅ~」
「カレル、どうした?」

何とか追っ手を撒いてから、盛大な溜息をひとつ。
隣にいるユーグはそんなボクを不思議そうに眺めていた。あれだけ走って息一つ乱れてもいないのだから、すごく羨ましい。

「ユーグはすごいなぁ、と思って…」
「はぁ?」
「あ、な、何でもないですっ!助けてくれてありがとう、ユーグ」

つい口をついて出た言葉を遮るように、慌ててお礼の言葉を述べる。
意味が分からない、とばかりに肩を竦められたけれど、ボクの言葉にユーグはどこか嬉しそうに微笑んでくれた。
…たったそれだけの事なんだけれど。

「…何だよ、カレル」
「へっ!?ぼ、ボク何か言いましたか?」
「べつに…ただ、笑ってるから」
「あ、えっと!」

ユーグの言葉に思わず顔を抑えたけれど、そんなのまったく意味がない事くらい分かっている。
笑ってしまったのは、彼が当然のように見せてくれる優しさのせいだ。
だからつい、嬉しくて笑ってしまう。ただ、それだけの事。

「何かあったのか?」
「え~と…あったというか、なかったというか」
「…?ヘンな奴だな」

説明するのも恥ずかしいし、言ったら言ったで笑われるかなと思って口を濁せば、ユーグはくすりと笑ってから背を向ける。
置いていかれるかと思えばそんな事はなくって、ユーグはボクが隣に来たのを確認してから歩き出した。
ボクはユーグの隣に立って、今度はきちんと離れないようにして。

「行くぞ」
「はいっ!」

たったそれだけの事、そんな小さなひとつひとつの事が嬉しくて。

(何ていうんだろ、この気持ち。…えっと、幸せ、かな?…うん、多分)




外は良い天気で、隣にはユーグがいて。
先刻まで追われていた事なんて無かったかのように、ボク達は歩き出す。
気付けばしっかりと手を繋いでいて、繋いだ手は暖かくて心地良かった。

(だから、きっとボクは幸せです。ユーグがいてくれるから、きっと)

これが、日常。
平穏なんてものは直ぐに壊れてしまうけれど、それでも真っ直ぐに歩き続ける。
だからこのまま…一緒にいられれば良いな、そう思いながら綺麗な青空を見上げたのだった。



* * * * * * * * * *

勢いまかせにユーグ&カレル、でした。
6話「テレーゼと買い物」イベントの会話で見事に落ちた結果がこれです。
カレルが一方的に慕っているのかと思いきや
ユーグも大事にしてるじゃないですか…!
そういうの弱いから勘弁してください…!と
思いつつハマりました。このカプは可愛いと思うなー


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