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ハトアリ、エリオット×アリス
二人で昼寝するのまき。



* * * * *

「……何で毎回こうなるの?」

うーん、と唸ってもどうしようも出来ない。
だってエリオットの下敷きにされて、身動きがまったく取れないのだから。



「まったく…幸せそうな顔しちゃって」

エリオットはすぅすぅと可愛らしい寝息を立て(これがいびきでなくてよかった)、起きる気配はない。
起こす時間になるまでやる事もない私は、せっかくだからと寝ているエリオットを観察する事にした。
皆そうなのかもしれないが、寝顔は可愛いし、普段より幼く見える。
この姿を見て、この男が帽子屋の腹心と呼ばれ恐れられている三月ウサギだ、と分かる人なんているんだろうか。

「寝顔だけ見たら、絶対分からないわよね…こんなに可愛いんだもの」

そう呟くと、エリオットの耳がぴくりと反応する。
起こしてしまったのか、と体を固くしたものの、エリオットが起きる様子はない。

「…何よ、もう。驚いて損した!」

文句を言ってエリオットの反応(主に長い耳)を見ても、今度は無反応。
ついでに色々と思ってもいない事を言ってみたが(馬鹿、とか)すべて無反応という結果に終わった。
となると、最初の言葉に何か反応する単語があったのだろうと見当をつけ、言った言葉を思い出す。

「寝顔…分からない…、あ。『可愛い』?」

思い出しながらそう言うと、またしてもエリオットの耳が反応する。どうやら当たり、らしい。

「…何でその単語に反応するわけ?」

聞いてみても、当然ながら眠ったままの相手から返事が返ってくるはずもない。
はぁ、と溜息を吐いてから、ふと面白い事を思い立った。身動きの取れない私にとっての暇つぶし。

「エリオットってすっごく可愛いわよね」

にっこり笑って(相手が眠っているのだから意味はないのだけれど)言ってみると、エリオットの長い耳がぴくぴくと反応する。
思った通り、この単語には反応する。それなら、と私は次のステップに進んでみた。

「…好き」

少し気恥ずかしいとは思ったが、その言葉はすんなりと出てきた。
そして言った途端にぴくん、と大きく反応をするエリオットの耳。しかし当の本人が起きる気配は、ない。
起きてもいないのに反応するなんて、一体どういう事だろう。たまらず笑ってしまう。

「何なの、もう…ほんと、可愛いんだから」

くすくすと笑っている間にも、エリオットの耳は可愛らしい反応を返してくる。
それを見て、私はますますおかしくなって笑ってしまう。まさに悪循環というやつだ。
そうやって、私がずっと笑っていたからか、エリオットの体がぴくりと動いた。

「…エリオット?」

もしかしたら、起こしてしまったのかもしれない。
考えてみればこんな間近で笑っていたのだから、聞こえないはずがないのだ(それを言ったら先刻の告白だって聞かれたかもしれないが)。
私は笑うのを止め、じっとしたままエリオットを見つめる。しかし、いつまで経ってもエリオットが起きる様子はなかった。

「起きたのかと思ったのに…まぁ、寝てる方が都合がいいけど」

エリオットが再び寝息を立て始めたのを確認してから、肩の力を抜く。
しかし…こうなると、今度こそやる事がなくなってしまった。
言葉遊びは楽しいけれどもし起こしてしまったら可哀想だし、かといってこんな楽しい事を続けられないのも悔しいし。

「……私も寝ようかな」

言ってみたところで、返ってくるのは規則正しい寝息だけ。しかも、聞いていたら何だか眠くなってきた。

「これはきっと、そうしろ!って誰かが言ってるのよね、うん。きっとそうだわ」

寂しい独り言を呟いて、誰にでもなく言い訳してみる。
エリオットは幸せそうに眠ったままだし、どうせやる事もないのだ。だったら一緒に寝た方が幸せに違いない。
本当は彼を起こさなくてはならないのだけれど、常に人の倍以上働いているエリオットを休ませる事だって重要だ、と思う。

「そうよね。休息は重要だものね」

うんうん、なんて何度も頷いて(一人芝居のなんと虚しいことか)、私はエリオットに抱きついて眠る事にした。
エリオットって子供体温なのかしら、なんて馬鹿みたいな事を考えながら目を閉じれば直ぐに睡魔が襲ってきて、私はあっさりと意識を手放した。



そうして。
惰眠を貪った私が起きてからまず目に入ってきた光景は
正座で床に座り耳がしゅんと項垂れたエリオットと、嫌味ったらしい小言をねちねちと言い続けるブラッドの姿だった。
理由は聞かなくても明白だ。私が寝たせいで起こしてもらえなかったエリオットは、仕事をすっぽかした事になったのだろう。
しかしエリオットは言い訳もせず無言のまま。(きっと私をかばっている)
そしてブラッドはそれが分かっているからこそ、楽しそうに小言を言い続けるのだ。

(…よく考えてみなくても、ブラッドが嫌味を言ってくるのは分かってたのに、ね)

さて、どうやってブラッドに言い訳したものか。起きぬけの頭で考えるには難しい問題が待っていて、私は深い溜息を吐いたのだった。


* * * * * * * * * *

エリオットの耳ってよく動いてますよね~
分かりやすい子は可愛くて好きです。
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