忍者ブログ
二次創作テキストサイト。はじめての方は「はじめに」をご覧下さい。
 19 |  18 |  52 |  17 |  16 |  51 |  24 |  50 |  49 |  48 |  21 |
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

幻水5、シグレ主 20話目。
今度はシグレとオボロさん。王子は出てきません。



* * * * *

(今日は、来ねぇか)

ちらりと事務所の入り口に目をやっても、開く気配などしない。
王子がやってくるかもしれない、と待ち望んでいる自分に呆れながら、煙草に火を点ける。
落ち着かない気持ちをどうにか抑えようと煙草を吸っても、どうにもならなかった。

(会いに行けばいいってのに、なァ)

自分の行動力のなさに我ながら呆れ返っていた、そんな時。


「シグレくんシグレくん」
「?何すか」

ふと、向かいに座って新聞を読んでいた先生に名前を呼ばれた。
視線をそちらに向けると、毎度の事だが人の良さそうな笑みを浮かべた先生と目が合う。
先生がこんな表情をしている時はロクな事がない。
(分かってはいても、どうにも回避できないのが辛いところだ)
どうしたものかと思いつつも、オレは先生の言葉を待つ事しか出来なかった。
すると、案の定。

「殿下の専属になったそうじゃないですか」
「!!な、何でそれを…!」

突然切り出された話題は、つい先刻までオレが想っていた相手の事。
心の準備も出来ていなかったオレには、少々刺激が強かった。
先生の言葉に動揺を隠せず聞き返すと、その様子に満足したように笑みを濃くした先生が口を開けた。

「おや、私の情報網の広さをご存知ないんですか?そんな訳ないですよねぇ」
「………」

(忘れてた、なんて言える訳がない)

そうだ、オレが居座っているこの場所は、れっきとした『探偵事務所』なのだ。
オレだって一応はここの調査員で、少しばかり調べればこの城にいる奴らの情報なんて直ぐに手に入る。
…そして先生はその中でも一番の情報網を持った探偵所長で…

(そりゃあ、バレるに決まってる)

先生にしてみれば恰好の話題、なのだろう。
元「幽世の門」の暗殺者、そして今現在では怠惰な日々を過ごしていたオレが…人を好きになるなんて。
自分でも有り得ない、と笑いそうになるのだから、先生にしてみれば尚更かもしれない。
何を言われても仕方ないだろう、と半ば諦めて、オレは視線を逸らした。

「まぁ、それはいいんですけどね。とにかくシグレくん」
「…何ですか」

(笑いたいのなら笑え。からかいたいのであれば、すれば良いじゃないか。馬鹿にされたって、オレは)

そう覚悟を決めて、煙草の煙を勢い良く吸った。
しかし…先生は何も言わない。
静まり返った事務所の中、壁時計から発せられる秒針の音が辺りに響く。
数十秒も経った頃、オレはその無言が耐え切れずに先生に目を向ける。
すると、視線の先には微笑んだままの先生がいた。

「絶対に、守りきるんですよ。絶対に、絶対です」
「…え」

想定していたものとは全く違う言葉を聞いて、オレは一瞬固まった。
しかし先生の言葉を反芻してみれば、意味なんて直ぐに分かるもので。

(…何だよ、)

「…ったり前っスよ」

言いながら鼻の奥がツンとして、自分が泣きそうになっている事に気が付いた。
こんな感情を持つ事が出来たのも、先生と…王子のお陰なのだろう。
そう考えてみると、ここに来て良かった、と素直に思えた。

「そうですか…なら、良いんです。良かった…本当に。」

オレの言葉を聞いた先生は、満足げに頷く。それと同時に、どこか安心したように溜め息を吐いた。
その様子を見たオレも、何故だか満足してしまい…珍しく(本当に、珍しく)笑う事が出来たのだった。


(こんな風に笑えるのも、お前のお陰だ)

そう、心の中で呟いて。
今度会う時には礼でも言うか、そんな事を思った。


* * * * * * * * * *

今度は王子のいないシグレ主。
王子の場合はリオン、
だったらシグレはオボロさんでしょう!
そう思って出来たお話でした。

PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
♥ Admin ♥ Write ♥ Res ♥
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
拍手など
Copyright ©  柚子缶  All Rights Reserved.
*Material by *MARIA  / Egg*Station  * Photo by Kun  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]