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幻水5、シグレ主 21話目。
バレンタインネタです。

* * * * *

最早日課となっている、王子殿下の事務所訪問(こんな名目ではあるが、実際の目的はオレに会いに来ているのだ、と思っている)。
普段なら真っ直ぐにオレの元へやってくるのだが、今日は珍しくゆっくりとした足取りでこちらへと歩いてやってきた。
よくよく観察してみれば、背中に何かを隠しているのが分かる。
何を持っているのか気にはなったが、とりあえずは相手が話しかけてくるのを待つ事にした。
どうせ、そのうち分かる事だ…そう思っていれば。

「あの。シグレさんは甘いもの苦手ですか?」
「は?…まァ、好きとは言い難いが」

出てきた言葉は、普段話題にもならない質問でもあった。
一体どういう風の吹き回しか、と首を傾げつつも返事をすれば、王子は少し困ったように笑う。

「ですよね。以前チーズケーキを食べてもらった時もそんな感じでしたし…」
「何だ、また食えってのか?」

またあれか、と以前食べる羽目になったチーズケーキを思い出す。
甘味が嫌いという訳ではないが、好きという訳でも、進んで食べようとも思わない自分にとっては微妙な土産物だな、とそっと溜息を吐く。
しかし王子は困った表情のまま首を振った。

「あっ、いえ!ケーキではなくて…えーと、その」
「歯切れ悪ィな」
「う。」

ケーキではないと言いながらも、否定しきれないように視線を泳がせる王子。
どうやら、背中に隠されたモノが甘味である事に間違いはなさそうだ。
今回も食べる羽目になるんだろうなと覚悟を決め、オレは王子の頭を軽く撫でた。

「まぁ…持ってきてくれたもんはちゃんと食べるから、安心しろ」
「え、ほ、ほんとですかっ?」
「ああ」

オレの言葉に、王子の顔がパッと輝く。
それを見て、どうせ事務所の面子が揃えば食べる奴もいるだろうし、と言いそうになった口を慌てて噤んだ。
折角嬉しそうに笑ってくれたのだから、その笑顔を曇らせる必要もない。
…こんな風に考える自分が少し笑えた。

「で、何を持ってきたんだよ?」
「あ、そうでした!えっと…これ、なんですけど…」

おずおずと手渡されたのは、可愛らしい包装を施された小さな箱。
あまり見慣れない包装にまじまじと見入っていれば、王子は慌てたように付け足した。

「チョコレート、なんですけど…」

言われてから再度箱を観察する。
行儀が悪いとは思ったが鼻に近づけ香りを嗅いでみれば、確かに特有の甘い香りがした。どうやら本当に、チョコレートが入っているらしい。
しかしどうしてチョコレートなのか、それにこの包装は何なのか(まるで女物の包装じゃねぇか、と言いそうになったが何とか抑えた)、疑問は尽きなかった。

「何でチョコなんだ?」
「え!シグレさん、知らないんですかっ?」
「あぁ。何か意味があるのか?」

思ったままの疑問をぶつければ、返ってきたのもまた、疑問。
本当に知らないから聞いただけなのだが、その質問はどうやら鬼門だったらしい。
オレの言葉を聞いて、王子の顔が見る見るうちに真っ赤に染まってゆく。
驚いてその様子を眺めていたら、相手はそわそわと落ち着きがなくなっていき…終いには、何も言わないまま。

「し…知りません!そ、それじゃ僕は用事があるのでこれでっ!」
「あ、おいッ」

こちらが止める間もなく、脱兎の勢いで逃げられてしまった。
残されたのはオレと、渡されたチョコレートのみ。
しばらく呆気にとられたまま佇んではいたものの、はたと我に返ったオレがするべき行動はたった一つだけだ。

「…ったく、めんどくせーな」

そうぼやいてから、王子の後を追いかけるだけ。
どうせあいつの行く所なんて予想はついているのだ、捕まえるのは造作もない事。
逃げられないようにしっかり捕まえて、一応貰ったものに対しての礼と…逃げた理由を問い質さなくてはならない。

(逃がさねーからな)

さてどこから捜そうか、どう驚かせてやろうか、なんて考えながら走り出した。



結局…
そのチョコレートに深い意味があったという真実を知ったのは、そう遠くない未来の話。



* * * * * * * * * *

大変遅くなってしまいましたが
シグレ主、バレンタイン話でした。
しかし、あの世界ってバレンタインなんてあるのだろうか。

あるにしても、シグレ達は知らないんだろうなぁと思うのです。
ずっと隔離された世界にいた訳ですし、
その後も世間一般のイベント事には興味持たないでしょうし…
(シグレの場合知る必要もなさそうだ、と判断したら絶対気にしないと思うし)
王子はイベント事は気にしそうだし、もちろん手作りで。
で、シグレは食べた後に知って慌てればいいと思う。

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