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テニプリ・伊武と巴。
あつっくるしい巴と、それを嫌いになれない伊武くんです。


* * * * *

世間一般では夏休みの季節。
休みが合ったからと呼び出された俺は、想像通りに笑顔満開の暑苦しい赤月巴に出会ったのだ。…そう、この暑苦しい街中で。


「伊武さん!とうとう夏休みですね~」
「…何、唐突に」

あまりの暑さに耐え切れなくなった俺は急ぎ足で近くの喫茶店へと向かう。
その隣を歩く赤月は、暑さなど気にならないといった様子で話しかけてきた。

「いやー、夏休みってワクワクしますよね!部活も遊びも両立するぞー!って感じで」
「…暑苦しいなぁ…というかうざいなぁ…」
「何か言いました?」

赤月が俺の様子など気にせず話しかけてくるのはいつもの事だったので(まったく、もう少し気配りの出来る人間になってくれないものか)、相手をする俺も気にせず本音を呟く。
すると途端に反応した赤月に睨まれてしまった。
こういう時だけは素早いな、と少しだけ感心すると同時に呆れて溜息が出た。

「別に…俺って正直者だから、つい本音が出ちゃっただけだよ」
「む、何ですかそれ!つまり伊武さんにとって私はうざったい子なんですか!」

俺のぼやきなんて聞き慣れている癖に、赤月は面白いくらいに反応を返してくる。
(そろそろ分かってほしいんだけど、馬鹿だから無理か。…頭はいいのに馬鹿だなんて、変なヤツ…)
だからつい面白くなって、俺の言葉は止まる事がない。赤月に対してだけは、どうしても。

「まぁ、間違ってはいないよね」
「ひ…ひどいです!ひどいですよ伊武さん!そこは普通『そんな事思ってないよ』とか爽やかに言うところじゃないですか!?」
「…そんな台詞、俺が言うと思ってる訳?」

話せば話すほど赤月はムキになって返してくる。本当に、単純だ。
けれど今日は珍しく、俺の言葉にぴたりと動きを止め、少しだけ首を捻って悩んだあと

「………いえ、まったく思わないです…」

何故だか申し訳なさそうに、肩を落としてそう言った。
予想していた答えだったとはいえ、そこまで落ち込まれるとこっちが悪いような気がしてくるのだから嫌になる。

「…これだよ、ムカつくなぁ…そっちもそっちで可愛げってものがないよなぁ…」
「い~ぶ~さ~ん~!」

気付けばまたしても本音を呟いていて、それを聞いた赤月が頬を膨らませて不満げに睨んできた。
そんな顔をされてもちっとも怖くないし…やっぱり面白いんだ、彼女の反応は。

(…それにほら、)

俺は思いつきのままに赤月の頭をぐしゃぐしゃと撫でてみて(わぁ、とか言ってたけど気にしない)、
彼女が不貞腐れた顔で髪の毛を手で梳く様子を見ながらぽつりと

「…まぁ、好きな子ほど苛めたい、って言うしね」

などと呟いてから、喫茶店へと向かう足を速めた。
身だしなみを整えるのに夢中で聞いていない事は分かっていたけれど、万が一という事もある。
(だったら言わなきゃいいんじゃないか、とも思うけれど俺は正直者だから。)

「ち、ちょっと待って下さいよ伊武さん!ひどいですよー!」
「喋ってないで早くしなよ、暑いんだからさ」

予想通り何にも気付いていない赤月は、慌てた表情で俺を追いかけてくる。
その様子に安心したような悔しいような、何とも言い難い気分になった。

「…やっぱり可愛くないよね、キミって」
「あー!また言った!ひどいです!」


馬鹿で鈍感な彼女に気付いてもらえるのは、まだ当分先の話になりそうだ。

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