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結婚ネタ?な遊クロ話。
* * * * *
「遊星、見てみろよ」
「え?」
隣を歩くクロウが指差した先には、幸せそうに笑う男女の姿。
それは久方ぶりに見る、結婚式だった。
周りには二人を祝福する友人達の姿があり、皆が笑顔を見せている。
ふとした時に見れる人々の笑顔が何よりも嬉しいと思えるのは、あの戦いが終わったからだろう。
「ああいうの見ると、オレ達のやった事って無駄じゃなかったって心底思うよな」
「…ああ、そうだな」
クロウも同じだったようで、彼らの様子を眩しそうに見つめている。そしてこちらに目を向け、お互いに同じ事を考えていたからか、嬉しそうに笑う。
その笑顔を見ると、不謹慎ながらも二人で買い物に来て良かったと心から思った。
(ジャックが買い物に付き合う事もないだろうから、次も楽しみだな)
などと考えながら歩き出そうとした時、目の前に白い何かが降ってきた。
「え、」
「あ、おい」
思わず手を出して受け止めると、それは小さいながらも綺麗な花束だった。
やってきた方向を見れば、つい先程見た花嫁と目が合い…そして何故か、笑われた。
「遊星お前…何貰ってんだよ」
すると隣にいるクロウは呆れた表情でこちらを眺めている。
ただ花束を受け取っただけでどうしてそんな顔をするのだろう?そう思ったら、つい疑問の言葉が出た。
「受け取ったらまずいのか?」
「え、もしかして知らねーの?」
知っているのがさも当然だろうと言わんばかりに驚くクロウ。
意味も分からず頷くと、肩を落として溜息を吐かれ、そして苦笑された。
「んじゃまぁ、何も知らねー遊星くんに教えてやっか」
「頼む」
「…んな真剣に聞くことでもないぜ?ただ単に、花嫁のブーケを受け取った奴が次に結婚するっつージンクスがあるんだよ。ほら、あっち見てみろ」
言われるがままにクロウの指差した先に目を向けると、どこか殺気立った女性達に睨まれた。
その勢いに圧倒され、思わず後ずさる。この手元にあるブーケを受け取りたかったのだという事が嫌でも分かってしまう迫力だった。
「…あれは…」
「な?あれが論より証拠、ってやつだ。女っておっそろしいよな」
そう、彼女達の様子を見ると納得してしまう話だった。
ブーケを受け取りたい、というのは結婚して幸せを掴みたい、という女性の心理を上手くついているのだろう。…多分。
そこでふと、思いついた。
結婚というのは何も女性だけのものではない。俺達男性のものでもあるのだ。そう考えてみると…
「クロウ…」
「んー?どうした、もしかしてあいつらに渡しに行ってやんのか?」
「いや…俺が受け取ったという事は、次は俺が結婚するという事でいいんだな?」
「は?何お前、結婚願望とかあんのか?」
俺の発言に、クロウは驚いたように目を丸くしてから、まじまじとこちらを見つめてくる。
そうだと言ったら笑われるのかもしれないが、言っておかなくてはならない気がした。
俺はしっかりとクロウを見つめ、
「クロウとなら、結婚したい」
精一杯の心を込めて、そう告げた。
するとクロウは先刻よりも益々目を丸くさせ、一瞬動きが止まり…見る見るうちに、顔が赤くなっていった。
「なっ……おま、なに言って」
「本当だ。クロウが好きだから、結婚したいと思うのは人として当然だろう」
相手から視線を外す事なく、俺は真剣に告白をした。
このまま抱き締めたいと思ったけれど、荷物があるせいでそれも出来ないのが悔やまれる。
仕方が無いから持っていた花束を渡そうかと一歩近づけば、クロウは一歩後ずさる。
「っ…結婚ってお前、その前に男同士だろうが!!つーかこんな所で…プロポーズ、とか、ありえねーし!」
「違う場所ならいいのか?」
「ちげーよ!ックソ、遊星のアホ!オレは聞かなかった、聞かなかったからな!」
捨て台詞を残して、真赤な顔のままクロウは走り去ってしまった。
慌てていてもしっかり荷物を抱えたまま、俺達の家がある方向へと走っていくのが何とも分かりやすい。
それに、何といっても。
(断られてはいない…と、思う)
クロウは怒っていただけだ。そう、拒絶されなかった事に安堵している自分がいる。
これはつまり、まだ望みはあるという事ではないだろうか?
近い将来、叶う日が来るかもしれない。
そんな期待を胸に、俺はクロウの後を追った。
謝って、けれど想いはしっかりと伝える為に、手にはブーケを持ったまま。
さあ、どうやってもう一度告白しよう?
* * * * * * * * * *
題名の曲を聞いていた時にふと思いついたネタ。
遊クロは遊星が一方的なまでにクロウ好きだといい。