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69話後のジャック→クロウ話。




* * * * *


「おいジャック、もうすぐ時間じゃねーのか?起きろー」
「………」

呼びかけても、ぐっすりと眠るジャックには聞こえていないらしい。
珍しい事もあるもんだとは思ったがすぐに原因に思い当たり、溜息を吐く。

「ったく、仕事を始めたと思ったらこれかよ。先が思いやられるぜ」

相手に聞こえてないからと、オレは独り言を呟いた。
こいつが重い腰を上げてから1週間。ジャックはようやく職を見つけてくれた。
何の仕事かと思えばなんと『モデル』だという。
道端で声をかけられたそうで、渡りに船とばかりにジャックはその仕事を始める事にしたという。
今まで散々口を酸っぱくして仕事を探せと言っていたオレとしては、ようやくあのジャックにも向いた仕事があるのかと安心したものだ。
しかし、ただ写真を撮られるだけだから簡単だろうと思えば、話を聞く限り(そしてこの様子を見る限り)結構体力のいる仕事らしく…

(…ま、起こさないどくか)

ようやくジャックがやる気を出してくれた事だし、少しくらい寝かせてやるのが優しさってモンだ。
仕事の時間まではまだ間に合うだろうし、オレが起こさなくとも遊星が気付いて起こすに違いない。
そう思ったオレは寝ているジャックを起こさずに、自分の仕事を始めるべく外へと向かったのだった。
…それが、間違いであるとも思わずに。




すっかり日も暮れ、今日の仕事をしっかりと終えたオレは見慣れた我が家へと戻ってきた。
腹も減ったしすぐ夕飯作らないとなあ、何作っかなあ、やっぱ肉だよななんてぼんやり考えながら扉を開く。

「ただいまー…っと」
「何故俺を起こしてから行かなかった!!」

と、突然の大声に、今夜のレシピは吹っ飛んでいった。
扉を半開きにしたまま、オレは家の前で馬鹿みたいに突っ立ったまま。
目の前には眉間に皺を寄せ、不機嫌そうに睨みつけてくるジャックの姿があった。

「えー、と?」
「貴様、聞いていなかったのか!?何故俺を」
「いや聞こえてるっつーの!つうかうるせーよ!」
「何だと!」

大声を張り上げ、ジャックは鋭い視線を向けてくる。
オレは怒鳴られた事に苛立って(あと今夜のレシピを忘れた事にも苛立って)怒鳴り返す。
するとジャックの後ろから、呆れたような表情の遊星が出てきた。

「二人とも、家の前で騒ぐな。また近所迷惑だと言われてしまう」
「う…分かってるっての」
「……フン、仕方あるまい」

近所迷惑、と言われていつもうちに怒鳴り込んでくるおばちゃんの姿を思い出す。
説教されるのはごめんだとばかりにそそくさと家の中に入ると、ジャックも同じ事を考えたのか、遊星の言葉に従うように静かになった。


「…で、何だって?」

椅子に座って落ち着いてから、オレは話を切り出した。
腹も減ったし直ぐにでも夕飯の支度をしたい所ではあったが、不機嫌そうなジャックの姿を見る限り相手をしなくてはならないのだろう、そう判断したからだ。
(それに夕飯時まで不機嫌な顔をされちゃあたまらない。飯が不味くなる)
すると向かいの席に座ったジャックに再び睨みつけられる。だからちゃんと話せっての。

「……先刻も言っただろう」
「だーかーら、突然すぎて理解できなかったんだよ!いきなり怒鳴るヤツがあるかよ!」
「ここにいるだろう!大体貴様、聞こえていると言ったではないか!」

家の中ならば良いと思ったのか、ジャックは大声を張り上げるばかり。
さっきはつい怒鳴り返してしまったが、仕事帰りで疲れも空腹もあるせいか言い返すのも疲れるよな、と思い直す。そうして、思わず溜息を吐いてしまった。

「あーもー、めんどくせーヤツだなー」
「何だと貴様!」
「…二人とも、喧嘩はやめておけ」

案の定ジャックは掴みかからん勢いで怒鳴ってきたが、遊星に止められ動きを止める。
その様子を眺めていると、遊星と目が合った。何故か疲れた顔をしている。

(今日は修理の仕事もないって言ってたし、疲れるような事は何も…って、あ)

恐らくではあるが、遊星はこのジャックの話し相手になっていたのだ。疲れない方がおかしい。
となると、面倒だなんて言ってもいられない。ジャックが怒っている理由は、何故かは知らないがオレの所為だと言う。
だったら聞いてみるしか道はないのだ。親友に迷惑をかけっぱなしだなんて、鉄砲玉のクロウ様の名が泣くってもんだ。

「あー…と、なんだ。悪い、遊星。なんかオレのせいみてーだし、しっかりこいつから話聞いとくから夕飯まで休んでていいぜ」
「…そうか、分かった。何かあったら声をかけてくれ」

オレの言葉にどこか安心したように微笑んで、遊星は奥の部屋へと向かっていった。
残されたのはここ最近で一番の機嫌の悪さを見せているジャックと、腹が減って仕方ないオレの二人だけ。
遊星を見送ってから視線を目の前の男に向け直し、オレはしっかりと話を聞く事にした。

「…で?」
「何だ」
「いやだから、何で怒ってんだよ?」
「先刻から何度も…!」

原因を探ろうと聞き返したはいいものの、再度火に油を注いでしまったらしい。
玄関で見た時より更に眉間に皺を寄せ、ジャックはこちらを射抜かんばかりの鋭い視線を向けてくる。
どうせなら遊星に原因を聞いておけばよかった、そう後悔してももう遅い。
この怒り狂ったジャックに聞くのは不可能だろうし、自力で数分前のやり取りを思い出してみるしか方法はなさそうだ。

(とは言ってもなー…夕飯の事考えてたからなー…)

こちらを刺してくるような鋭い視線から逃れるように視線を彷徨わせると、ふと見慣れない紙袋が目に入る。
どうせだからとじっくり観察してみると、どこかで見たような社名が読み取れた。
つい最近見たような、その名前を思い出そうとしていると、

「おいクロウ、何処を見ている!」
「あ?何処ってお前、あの紙袋…ってあああ!!」

ジャックに怒鳴られて思い出した。何かと思えばそれはジャックが働いている会社の名前だったのだ。
そして、それにつられるように思い出した。ジャックが何と言って怒鳴っていたか。『何故起こさなかったか』、そう言っていたじゃないか!
思い出した事にすっきりして、勢いよくジャックの方に振り向いた。
するとジャックはこちらの行動に驚いたのか、目を瞬かせてから我に返ったように睨んでくる。

「な、何だ貴様、突然騒いで…」
「思い出したぜ!何で起こさなかったのか、って話だろ?」
「!思い出した、という事は本当に忘れていたのか!?人の話はしっかり聞いておけとマーサに習ったではないか!」

オレの言葉に数秒動きを止めたジャックだったが、直ぐに普段の偉そうな態度に戻る。
普段なら気に障るその態度も気にする事なく、オレは思い出した事に満足して笑って返す。

「まあいいじゃねーか。んで?起こさなかった理由が知りたかったのかよ?」
「……そうだ。仕事が午後からだったお前が起こすのが当然だろう」
「当然ってお前な…まあ、起こさなかったのは悪かったけどよ、オレじゃなくたって遊星がいるじゃねーか」

原因が分かってみれば簡単な事だった。
どうやらこのキング様は、寝坊をして仕事に遅刻したようだ。
だから起こさなかったオレが悪いという事で不機嫌極まりない、と。まったく、オレより年上の癖にガキかっての。

「……遊星は忙しいだろう。それに、頼んでおいた筈だ」
「あのなー、オレだってちゃんと声かけて起こそうとしたんだぜ?けど全然起きねーし気持ち良さそうに寝てるし、って事で気遣ってみたっつーか」

言い訳がましいような気はしたが、声をかけた事は事実なので伝えておく。
すると一瞬ジャックの動きが止まった。けれど直ぐに何事もなかったかのようにこちらに視線を向ける。
何か可笑しな事でも言ったのかと思ったが、それよりもまず聞きたい事があった。

「そもそも何でオレだけに頼むんだよ?」
「…遊星より、お前の方が暇だろう」
「そ、そりゃ赤字経営だけどな、別にそんな暇じゃねーよ!」

痛いところを突かれ、ぐっと詰まりながらも何とか返す。
どうせなら睨んでやろうかとも思ったが、先刻まであったジャックの刺々しい態度が緩和されている事に気付いた。
それだけではなく、こちらを睨んでいた筈のジャックの視線がそわそわと彷徨っている。
一体どうした事かと今までのやり取りを思い出してみても、さっぱり理由が分からない。

「おい、ジャック?」
「…用事を思い出した。俺は部屋に戻る」
「はあ!?」

不思議に思って声をかけた途端、ガタン、と大きな音を立てて椅子から立ち上がるジャック。
そうして、こちらを見る事なく背を向ける。まだ話は終わってないってのに!
しかし慌てたオレが止めようと立ち上がる間もなく、ジャックはリビングを出て行ってしまった。
残されたオレはといえば、ぽかんと口を開けたまま、椅子に座ったまま、何が何だか分からないまま。

(何なんだよ、あいつ)

ジャックの行動は分かりやすいと思っていたが、考えを改めなくてはならないようだ。
一体自分が何をしたのか思い出そうとしたが、その瞬間に気が緩んだのか盛大に腹の虫が鳴る。

(…とりあえず、飯作ってから考えるか)


今日は怒鳴られ損だ、と盛大な溜息を吐いてから、オレは夕飯をどうするかを再び考え始めたのだった。


* * * * * * * * *

ジャックは何だかんだ言っても口喧嘩ができるクロウを気に入ってるといいよ!
んで気に入ってるけどそれを言えないでいるともっといい。
あ、この三人だと家事はクロウと遊星が半々なのかなー、と思ってます。
クロウは料理も掃除も得意そう。
料理は大勢で食べるものとか得意であってほしい。あと子供が好きなものとか。
遊星は凝った料理上手そうなイメージ。んで掃除は苦手とか。
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